成分名 |
マラビロク |
適応症状 |
HIV(ヒト免疫不全ウイルス)感染症/エイズ |
簡易説明 |
マラビロクは1996年にC-Cケモカイン受容体5(CCR5)が欠損しているHIV患者さんは感染が成立しにくいという報告を元に、アメリカのファイザー社によって開発されました。数々の臨床試験を経て、マラビロクを主成分としたシーエルセントリ(以下、本剤)は世界初の経口可能なHIV侵入阻害薬(抗HIV薬)として発売されました。
なお、本剤は抗ウィルス薬ではありませんので、HIV感染症を根本的に治すものではありません。 |
処方可能な診療科目 |
内科/感染症科/免疫内科など(エイズ治療拠点病院) |
健康保険の適応 |
CCR5指向性HIV-1感染症 |
病院で処方してもらう時の費用目安 |
診察料などの目安:278,430(4錠×30日分)
※併用薬などにより1日量が増減することがあります。
薬代1錠あたりの目安:2,320.20円
薬代後発品1錠の目安:後発品なし
病院によって差が有り薬代の他に、初診料・診察料・検査料などが必要になる。
本剤使用前には指向性検査が行われます
※本剤は他の抗HIV薬と併用されます。併用薬によっては高額療養費制度の対象となるため、患者の年齢、所得水準等によっても費用は異なってきます。
※HIVが混入した血液製剤の使用により感染した方には救済制度があります。 |
厚生労働省による認可、または発売年月日 |
発売年月日:2009年1月22日 |
国内のジェネリック認可 |
現在ジェネリック医薬品の製造はありません。 |
関連製品(先発薬) |
シーエルセントリ錠150mg【製薬メーカー:グラクソ・スミスクライン株式会社】 |
関連製品(ジェネリック) |
現在ジェネリック医薬品の製造はありません。 |
海外での使用実績 |
アメリカで2007年8月にアメリカ食品医薬品局(FDA)で承認を取得して以降、ヨーロッパ医薬品局(EMA)の承認を得るなどして、2010年8月現在、イギリス、ヨーロッパ諸国を含む73の国と地域で販売されています(販売名:CelsentriまたはSelzentry)。 |
効果・作用 |
既存のHIV治療薬はHIVが細胞内に侵入した後で作用しますが、本剤はHIVの細胞内への侵入を阻害する新規作用機序の薬です。本剤がCCR5と結合することで、CCR5を指向しているタイプのHIVの侵入を阻害します。HIV感染者の感染早期はほとんどがCCR5指向性HIVが検出されますが、病状が進行すると、CXCR4指向性HIVやCCR5/CXCR4二重/混合指向性HIVが検出される割合が増えてくることが知られていますがこれらの指向性HIVに感染している方には使用できません(本剤投与前には指向性検査が必要となります)。
本剤の治療効果は海外で行われた各種臨床試験で確認されています。CCR5指向性のHIV感染症患者1,076例を対象とした試験では最適背景療法に本剤を追加投与すると、45.5%の患者で血中のHIV量が検出限界以下に減少しました(追加投与なしでは16.7%)。また、CD4リンパ球(HIV感染によって破壊される免疫細胞)の平均増加幅は124.07/mmとなったことから、免疫学的効果も確認されました。(追加投与なしでは60.93/mm)。
一方、抗HIV治療ガイドライン(2022年3月発行)では、本剤は初回治療に使用する意義は少ないと考えられています。また、「初回治療として行ってはならない抗HIV療法」で「処方の一部に含めるべきでない抗HIV薬の組み合わせ」に指向性検査を要するなどの理由で本剤が含まれています。 |
新型コロナウイルス感染症予防・治療に関して |
予防接種や治療を受ける場合や薬局などで薬(セイヨウオトギリソウ含有食品を含む)を購入する場合は、本剤を飲んでいることを必ず医師、薬剤師に伝えてください。
本剤により、体の抵抗力が弱まり、感染症にかかりやすくなったり、感染症が悪化したりすることがありますので、感染症には気を付けてください。 |
使用方法 |
1回2錠を1日2回飲みます。他の抗HIV薬に応じて飲む量が増減することがあります。 |
副作用 |
主な副作用
疲労(7.3%)、発疹(5.6%)、浮動性めまい(4.7%)、不眠症(3.3%)、便秘(3.1%)
重大な副作用
・心筋虚血(1件):致命的な経過をたどることがあるため、直ちに休薬や投与中止などを検討します。
・肝硬変(1件)、肝不全(1件)、肝酵素上昇(2件)、肝機能検査異常(3件):症状に応じて適切な処置を行います(本剤との関連が疑われ、肝移植に至った症例の報告があります)。
・肺炎(1件)、食道カンジダ症(3件):症状に応じて適切な処置を行います。
・胆管癌、骨転移、肝転移、腹膜転移:肝臓、骨、腹膜への転移を伴う細胆管癌のため死亡した症例が報告されています(本剤が免疫機構に影響を及ぼす可能性があるため、重大な副作用として添付文章に記載されています)。
・汎血球減少症(1件)、好中球減少症(1件)、リンパ節症(3件):症状に応じて適切な処置を行います。
・幻覚(1件):症状に応じて適切な処置を行います。
・脳血管発作(1件)、意識消失(1件)、てんかん(1件)、小発作てんかん(1件)、痙攣(2件)、顔面神経麻痺(1件)、多発ニューロパチー(3件)、反射消失(2件):症状に応じて適切な処置を行います。
・白内障(1件):症状に応じて適切な処置を行います。
・呼吸窮迫(1件)、気管支痙攣(1件):症状に応じて適切な処置を行います。
・膵炎(2件)、直腸出血(1件):合併症予防(絶食、輸液、疼痛管理、感染症対策)など重症度に応じた適切な処置を行います。
・筋炎(1件):症状に応じて適切な処置を行います。
・腎不全(2件)、多尿(3件):電解質補正、栄養管理、透析などの適切な処置を行います。
・皮膚粘膜眼症候群:海外の自発報告されています。本剤との関連性は明確ではありません。
※その他、異変を感じた場合は直ぐに医師の診察を受け指示に従ってください。 |
使用に注意が必要な方 使用出来ない方 |
使用が出来ない方 ■マラビロクを配合した医薬品の添加物にアレルギーをお持ちの方
本剤及び下記、添加物にアレルギーをお持ちの方、シーエルセントリはアレルギー反応を起こしてしまう為、服用できません。
▼シーエルセントリの有効成分
マラビロク
▼シーエルセントリの添加物
結晶セルロース、無水リン酸水素カルシウム、デンプングリコール酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ポリビニルアルコール(部分けん化物)、タルク、酸化チタン、マクロゴール4000、大豆レシチン、青色2号
※本剤を通常量(1回300mg1日2回)以上飲んだ場合の有効性・安全性情報はありません。
※本剤を飲んでいる方は感染症発症の危険性が増大している可能性があります。
※めまい等があらわれることがあるため、自動車運転等の危険を伴う機械の操作は控えてください。
使用に注意が必要な方 ・重篤な心疾患(過去に罹患した方を含む)の方:心筋虚血等をおこすおそれがあります。
・B型・C型肝炎の方:肝機能が悪化するおそれがあります。
・起立性低血圧U過去に罹患した方を含む)の方:起立性低血圧をおこすおそれがあります。
・降圧作用を持つ併用薬を飲んでいる方:【併用注意薬】参照
・重度の腎機能障害のある方:本剤の血中濃度が上昇するおそれがあります(起立性低血圧をおこす危険性が高まります)。特にプロテアーゼ阻害剤との併用時には注意が必要です。
・腎機能障害のある方(クレアチニンクリアランスが80mL/分以下の方):本剤の血中濃度が上昇するおそれがあります。
・肝機能障害の方:肝機能が悪化するおそれがあります。
・妊婦、小児:臨床試験を行っていません。
・授乳婦:動物実験で乳汁への移行が報告されています(HIV感染女性は乳児への感染を避けるため、授乳しないことが望ましいとされています)。
・高齢者:一般に生理機能が低下しています。
上記にあてはまる方は、マラビロクを使用する事が出来ない可能性があります。 マラビロクを使用する前に、医師又は薬剤師に使用しても問題ないか必ず確認をして下さい。 |
併用禁忌薬 |
併用注意薬 ・HIVプロテアーゼ阻害剤(※)(非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤(以下、NNRTI)(エファビレンツ、エトラビリン※tiprannavir+リトナビルの場合を除きます。)、リファブチン併用を含む)、NNTRI(デラビルジンメシル塩酸塩),抗真菌剤(イトラコナゾール、ケトコナゾール)、抗菌剤(クラリスロマイシン、テリスロマイシン)、テラプレビル:本剤の血中濃度が上昇するおそれがあるため、150mg1日2回投与に減量します。
(※)本注意が必要なHIVプロテアーゼ阻害剤
HIVプロテアーゼ阻害剤:アタザナビル硫酸塩、アタザナビル硫酸塩+リトナビル、ロピナビル・リトナビル、サキナビル+リトナビル、ダルナビルエタノール不可物+リトナビル、ネルフィナビルメシル酸塩、インジナビル硫酸塩、ホスアンプレナビルカルシウム水和物+リトナビル
・NNRTI(エファビレンツ、エトラビリン)、抗菌剤(リファンピシン)、カルバマゼピン、フェノバルビタール、フェニトイン:本剤の血中濃度が低下するおそれがあるため、600mg1日2回投与に増量します。
・リファンピシン+エファビレンツ、セイヨウオトギリソウ含有食品:本剤の血中濃度が著しく低下し、本剤の効果消失、耐性が生じる可能性があるため、併用を推奨されません(セイヨウオトギリソウ含有食品は摂取しないよう注意が必要です)。
・降圧作用を有する薬剤:起立性低血圧が発現することが確認されています。
上記を使用している方は、マラビロクを使用する事が出来ない可能性があります。 マラビロクを使用する前に、医師又は薬剤師に使用しても問題ないか必ず確認をして下さい。
併用禁忌薬 なし
併用禁忌薬がないからといって、その他の医薬品と併用するのは危険です 現在、薬を服用している場合は、併用可能かどうか必ず医師に相談してください。 |
マラビロクに関する よくある質問 |
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参考元一覧 |
マラビロク(シーエルセントリ 添付文書、インタビューフォーム) 【PMDA 医療用医薬品 情報検索】
シーエルセントリ錠150mg 【PMDA 患者向医薬品ガイド】
抗HIV治療ガイドライン 2022年3月 【令和3年厚生労働省行政推進調査事業費補助金エイズ対策政策研究事業 HIV感染症および血友病におけるチーク医療の構築と医療水準の向上を目指した研究班】
エイズQ&A Q.28 血液製剤によるHIV感染者などに対する救済制度があると聞いたのですが・・・? 【エイズ予防財団 エイズ予防情報ネット】 |
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