抱水クロラール

成分名

抱水クロラール

適応症状

理学検査時における鎮静・催眠/静脈注射が困難なけいれん重積状態 など

簡易説明

「抱水クロラール」は最初の鎮静剤として合成されたもので、エタノール、ジエチルエーテルに溶けやすく、水には非常によく溶けて鼻を突く刺激臭があり、強い吸湿性があり、強酸化剤と激しく反応する特徴があります。
日本においては久光製薬よりエスクレの商品名で販売しています。
「抱水クロラール」は1832年に、ギーセン大学のユストゥス・フォン・リービッヒにより合成された薬で、ベルリン大学のオットー・リープライヒが1869年に不眠症を改善する薬としての有効性を認めました。
しかし、匂いや味が酷くて、治療域と有毒域の間が狭いということもあり、1900年ごろに登場したバルビツール酸系薬にとって代わられ、現在ではさらに安全性の高いベンゾジアゼピン系の薬剤が登場しています。

処方可能な診療科目

内科/心療内科/精神神経科/精神科/麻酔科 など

健康保険の適応

健康保険適応

病院で処方してもらう時の費用目安

診察料などの目安 :約2,000円~10,000円
エスクレ坐剤「250」32.9円/個(薬価)
エスクレ坐剤「500」41.8円/個(薬価)
*病院によって差が有り。初診料・診察料・検査料などが必要になる。

厚生労働省による認可、または発売年月日

1980年2月認可

国内のジェネリック認可

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関連製品(先発薬)

エスクレ坐剤「250」【製薬メーカー:久光製薬】
エスクレ坐剤「500」【製薬メーカー:久光製薬】

関連製品(ジェネリック)

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効果・作用

「抱水クロラール」は中枢神経系(大脳皮質)に作用して、中枢抑制・催眠作用ならびに抗けいれん作用をあらわすことから、
19世紀には鎮静・催眠、けいれん重積状態などの薬剤として用いられました。
しかし、20世紀に脳の大脳皮質や脳幹に作用して、脳の覚醒を抑えることで、眠気や鎮静作用をあらわすバルビツール酸系の薬剤が登場したことで次第に使われなくなり、現在ではBZD受容体を刺激し、主にGABAの神経伝達を亢進することで催眠・鎮静作用をあらわす安全性の高いベンゾジアゼピン系の薬剤に置き換わっています。
「抱水クロラール」は、生体内でトリクロロエタノールに変化して、活性物質として中枢抑制作用を示しますが、「抱水クロラール」にも中枢抑制作用がありことから、投与直後の作用は「抱水クロラール」によるもので、その後の作用はトリクロロエタノールによるものとされています。
「抱水クロラール」は依存や過量服薬での危険性のほか、胸やけや発疹の副作用も多くて麻酔作用も有していることから、1853年に最初の静脈麻酔薬として用いられました。
ただ、その後は治療域と有毒域の間が狭いことや、作用が遅いため使われなくなっています。
「抱水クロラール」は匂いや味が酷くいことから、経口投与はせずに直腸内投与にのみ使用します。
直腸内投与では挿入後10分以内に排泄された場合、その形状が保たれていても、一部が吸収されている可能性がある為、再投与は慎重に行う必要があります。
厚生労働省は2017年3月に「抱水クロラール」の重大な副作用の項目に、「連用により依存症を生じることがあるので用量と使用期間に注意して慎重に投与し、急激な量の減少によって離脱症状が生じるため徐々に減量する。」旨を追加して、周知徹底のため関係機関に通達しています。
また、医薬品医療機器総合機構の調査結果には、日本の学術雑誌8誌と診療ガイドライン5つによる要旨が記載されています。

使用方法

▼用法用量
・抱水クロラールとして、通常小児では30~50mg/kgを標準とし、直腸内に挿入します。なお、年齢・症状・目的に応じ適宜増減しますが、総量1.5gを越えないようします。

▼坐剤の挿入について
・使用の際に、カプセル表面または肛門部にゼリー様の油性物質を塗ると挿入が容易になります。あるいは肛門部を水でぬらしてから挿入します。(カプセルに水をつけると膨潤・変形して挿入困難になることがある)

副作用

副作用発現状況の概要について、承認時及び承認時以降の副作用調査1499例中6例(0.40%)で副作用が確認されており、その症状は、下痢5件(0.33%)、食欲不振1件(0.07%)、徐脈・呼吸緩徐1件(0.07%)となっています。

重大な副作用
▼無呼吸、呼吸抑制(頻度不明)
無呼吸、呼吸抑制が起こることがあります。心肺停止に至った症例も報告されているので、呼吸状態の観察を十分に行い、異常が認められた場合には適切な処置を行ってください。

▼ショック(頻度不明)
ショックを起こすことがあります。観察を十分に行い、呼吸困難、チアノーゼ、血圧低下、浮腫、全身発赤等があらわれた場合には、投与を中止して適切な処置を行ってください。

▼依存性(頻度不明)
連用により薬物依存を生じることがあります。観察を十分に行い、用量及び使用期間に注意し慎重に投与してください。また、連用中の投与量の急激な減少ないし投与の中止により、まれに痙れん発作、せん妄、振戦、不安等の離脱症状があらわれることがあるので投与を中止する場合には、徐々に減量するなど慎重に行ってください。

その他の副作用
・発疹、紅斑、そう痒感
・好酸球増多、白血球減少
・下痢
・食欲不振
・頭痛、めまい、ふらつき、運動失調、興奮、抑うつ、構音障害
・徐脈

※その他、異変を感じた場合は直ぐに医師の診察を受け指示に従ってください。

使用に注意が必要な方
使用出来ない方

使用が出来ない方
■本剤の成分(ゼラチン等)に対して過敏症の既往歴のある患者
本剤の成分(ゼラチン等)に対して過敏症の既往歴のある患者には投与しないでください。[本剤のカプセルの主成分はゼラチンである。ワクチン類に安定剤として含まれるゼラチンに対し過敏症の患者に、本剤を投与したところ過敏症が発現したとの報告があります。また、本剤投与によりショック様症状を起こした患者の血中にゼラチン特異抗体を検出したとの報告があります。]

■トリクロホスナトリウムに対して過敏症の既往歴のある患者
トリクロホスナトリウムに対して過敏症の既往歴のある患者には投与しないでください。[本剤は、生体内でトリクロロエタノールとなります。]

■急性間けつ性ポルフィリン症の患者
急性間けつ性ポルフィリン症の患者には投与しないでください。[ポルフィリン症の症状を悪化させます。]

使用に注意が必要な方
■肝障害、腎障害のある患者
肝障害、腎障害のある患者には慎重に投与してください。[本剤は肝臓において加水分解され、トリクロロエタノールとなり、また腎臓より排泄されるため、これらの患者では血中濃度の持続・上昇により副作用を増強するおそれがあります。]

■虚弱者
虚弱者には慎重に投与してください。[呼吸抑制を起こすおそれがあります。]

■呼吸機能の低下している患者
呼吸機能の低下している患者には慎重に投与してください。[呼吸抑制を起こすおそれがあります。]

■重篤な心疾患又は不整脈のある患者
重篤な心疾患又は不整脈のある患者には慎重に投与してください。[心機能抑制により症状を悪化させるおそれがあります。]

■妊婦、産婦、授乳婦等への投与
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないことが望ましいです。[妊娠中の投与に関する安全性は確立していません。]

■小児等への投与
無呼吸、呼吸抑制が起こり、心肺停止に至った症例も報告されています。特に慎重に投与及び観察をしてください。

上記にあてはまる方は、抱水クロラールを使用する事が出来ない可能性があります。
抱水クロラールを使用する前に、医師又は薬剤師に使用しても問題ないか必ず確認をして下さい。

併用禁忌薬

併用注意薬
・他の安定剤や抗うつ剤など
・トリクロホスナトリウム(トリクロリール)

上記を使用している方は、抱水クロラールを使用する事が出来ない可能性があります。
抱水クロラールを使用する前に、医師又は薬剤師に使用しても問題ないか必ず確認をして下さい。

併用禁忌薬
・アルコール(飲酒)

上記の併用禁忌薬に入ってないからといって、その他の医薬品と併用するのは危険です
現在、薬を服用している場合は、併用可能かどうか必ず医師に相談してください。

よくある質問
「抱水クロラール」の使用で気を付けることはありますか?

経口投与はしないでください。直腸内投与にのみ使用してください。

現在妊娠していますが「抱水クロラール」を使えますか?

妊娠中の投与に関する安全性は確立していないため、使わないことが望ましいです。

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