トラマドール塩酸塩

成分名

トラマドール塩酸塩

適応症状

非オピオイド鎮痛剤(NSAIDs:ロキソニン・イブプロフェンなど、アセトアミノフェン)治療困難な、痛みを伴う各種がんや慢性疼痛など

簡易説明

《注意》
この記事ではトラマドール塩酸塩が含まれるワントラム錠、ツートラム錠、トラマールOD錠についての説明等を記載しています。同成分であるトラマール注に関しては注射液のため、一般の方の自己使用ないと思われるため、記載しておりません。また、アセトアミノフェンが配合されたトラムセット配合錠、トアラセット配合錠に関してはここでは扱っておりません。別の記事をご覧ください。

これらの薬は劇薬に指定されています。
指示通りに使用すれば特に問題ありませんが、用量などを間違えると命に関わることもあります。必ず、医師、薬剤師の指示通りに服用し、分からないことなどがあれば必ずご相談ください。また、同じような効果を表す薬は医療用麻薬に指定されているものもありますが、この薬は医療用麻薬ではありません。

《簡易説明》
この薬はがんなどによる痛みをロキソニンやカロナール(アセトアミノフェン)、イブプロフェンなどで緩和することが出来ない患者さんに向けた薬です。オピオイド受容体と結合、モノアミン再取り込みを阻害することで、強い痛みを抑えます。
この薬には注意が必要な点が多くあります。使用方法・使用に注意が必要な方・使用できない方の項目をよくご確認ください。

処方可能な診療科目

がん治療を実施している診療科、腫瘍内科、緩和ケア内科、麻酔科(ペインクリニック)など

健康保険の適応

健康保険適応

病院で処方してもらう時の費用目安

慢性疼痛の治療法は様々で、どの病院に行ってどんな治療を受けるかによって、費用も大きく異なります。費用の確認が必要な場合は、主治医に確認してみることをお勧めします。
ちなみに、薬の処方のみを考えると、処方箋料が約700円+処方料約1,000円+薬剤料約2,800円=4,500円(自己負担割合によって変動します)
※実際とは異なる場合があります。あくまでも目安としてください。

厚生労働省による認可、または発売年月日

●ワントラム錠100mg
製造販売承認年月日 2015年3月26日
薬価基準収載年月日 2015年5月20日
販売開始年月日   2015年6月2日

●ツートラム錠50mg・100mg・150mg
製造販売承認年月日 2020年9月25日
薬価基準収載年月日 2020年11月25日
販売開始年月日   2021年1月8日

●トラマールOD錠25mg・50mg
製造販売承認年月日 2014年9月16日
薬価基準収載年月日 2014年11月28日
販売開始年月日   2014年12月1日

国内のジェネリック認可

ジェネリックなし
※トアラセット配合錠(トラマドール塩酸塩とアセトアミノフェンの配合錠)に関してはジェネリックがあります。

関連製品(先発薬)

ワントラム錠100mg(ファイザー製薬)

ツートラム錠50mg(日本臓器製薬)
ツートラム錠100mg(日本臓器製薬)
ツートラム錠150mg(日本臓器製薬)

トラマールOD錠25mg(ファイザー製薬)
トラマールOD錠50mg(ファイザー製薬)

トラマール注100(日本新薬)

関連製品(ジェネリック)

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効果・作用

《効果》
非オピオイド鎮痛剤で治療困難な下記における鎮痛
〇疼痛を伴う各種がん
〇慢性疼痛

がん疼痛を対象とした臨床試験の結果
疼痛コントロール良好率(%)
投与開始2週間後 68.2%
投与開始8週間後 71.6%
投与開始24週間後 76.7%

《薬効薬理》
この薬は薬理学的にモルヒネ硫酸塩水和物、オキシコドン塩酸塩水和物、コデインリン酸塩水和物と関連があります。

薬の効き方を簡単に説明すると2つの作用があります。1つ目は、オピオイドμ受容体と呼ばれる体の痛みの制御を行っている物質と結合することで痛みを抑えます。2つ目は、脳から末梢へと痛みを伝達する神経を抑制する物質の活性化を行い、痛みを減らします。

使用方法

≪注意≫
この薬は劇薬であり、とても効果の強い薬です。下記の服用量は添付文書(薬の説明書)に書かれている量で、症状、年齢、持病などにより変動する可能性があります。必ず医師、薬剤師の説明をよく聞き、ご不明な点があれば必ずご相談ください。勝手な自己判断は絶対におやめください。

●ワントラム錠100mg
成人の方は100mg~300mg(1~3錠)を1日1回飲んでください。症状により増減することがありますが、1日400mgを超えないようにしてください。できるかぎり毎日同じ時間に服用するようにしてください。

●ツートラム錠50mg・100mg・150mg
成人の方は100mg~300mgを1日2回に分けて飲んでください。症状により増減することがありますが、1回200mg、1日400mgを超えないようにしてください。朝・夕に服用することが望ましいです。

●トラマールOD錠25mg・50mg
成人の方は1日100mg~300mgを4回に分けて飲んでください。症状により増減することがありますが、1回100mg、1日400mgを超えないようにしてください。4~6時間の間をあけて、毎日決まった時間に服用してください。ただし、服用のタイミングは多少変えても大丈夫です。また、この薬は口腔内崩壊錠(OD錠)です。普通の錠剤と同様に水で飲むか、下の上にのせて唾液を含ませてから飲み込んで下さい。

《使用上の注意》
・初回投与時は服用量を減らし、徐々に増量していくことが望ましいとされています。必ず医師、薬剤師の服用の指示通りに服用してください。
・毎日出来るだけ決まった時間に飲むようにしてください。
・症状がひどいときは増量を検討することが出来ます。医師にご相談の上、その指示に従ってください。
・1か月ほど飲んでも効果が表れない場合は、医師にご相談ください。
・この薬の服用をやめるときは徐々に減らす必要があります。必ず医師、薬剤師の指示に従ってください。
・薬物依存が発生する可能性がある薬です。周囲の方がよく観察をしてあげてください。
・眠気、めまい、意識消失を起こす可能性があるので、自動車等の運転を行わないでください。過去に意識消失により、自動車事故を引き起こした例があります。
・この薬は痛みの症状を一時的に抑える対症療法に使われる薬です。原因の疾患の治療は行えません。
・ワントラム錠100mg、ツートラム錠50mg・100mg・150mgは口の中でかみ砕いたり、割って飲んだりしないでください。重大な副作用が発生する可能性があります。

副作用

重大な副作用
以下の症状が出たときは、速やかに投与を中止し、必要な処置を行ってください。
・ショック、アナフィラキシー(頻度不明)
→呼吸困難、気管支けいれん、血管浮腫などの症状があります。

・呼吸抑制(0.1%)

・けいれん(頻度不明)

・依存性(頻度不明)
→長期使用した際に、耐性、身体的依存、精神的依存が起こることがあります。また、この薬の服用量減少時に、不安、神経過敏、不眠症、運動過多、振戦、胃腸症状、パニック発作、幻覚、錯感覚、耳鳴等の症状が現れることもあります。

・意識消失(頻度不明)

その他の副作用
〇5%以上
・傾眠(眠気)
・浮動性めまい
・悪心
・嘔吐
・便秘
・食欲減退

〇1~5%未満
・頭痛
・振戦
・不眠症
・腹部不快感
・多汗症
・そう痒感

〇1%未満
・口腔咽頭不快感
・発生障害
・血圧上昇
・ほてり
・血圧低下
・動悸
・起立性低血圧
・高血圧
・好中球増加
・好酸球増加
・リンパ球減少
・ヘモグロビン減少
・赤血球減少
・白血球増加
・せん妄
・睡眠障害
・感覚鈍麻
・味覚異常
・健忘
・回転性めまい
・耳鳴
・悪夢
・落ち着きのなさ
・不安
・異常行動
・活動性低下
・無感情
・不快気分
・下痢
・上腹部痛
・口内乾燥
・口内炎
・消化不良
・腹痛
・胃炎
・口唇炎
・胃食道逆流性疾患
・腹部膨満感
・おくび(げっぷ)
・AST増加
・ALT増加
・LDH増加
・肝機能異常
・ビリルビン増加
・湿疹
・発疹
・全身性そう痒症
・じんましん
・薬疹
・冷汗
・寝汗
・排尿困難
・尿糖陽性
・尿蛋白陽性
・尿潜血陽性

〇頻度不明
・呼吸困難
・口腔咽頭痛
・咽喉乾燥
・不整脈
・蒼白
・胸内苦悶
・頻脈
・徐脈
・好酸球減少
・ヘマトクリット減少
・血小板減少
・幻覚
・鎮静
・体位性めまい
・不随意筋収縮
・記憶障害
・ジスキネジー
・眼振
・疲労
・気分動揺
・うつ病
・頭重感
・激越
・抑うつ気分
・両手のしびれ感
・ふらつき感
・不快感
・錯感覚
・協調運動異常
・失神
・錯乱
・精神運動亢進
・錯覚
・言語障害
・口の錯感覚
・胃腸音異常
・イレウス
・Al-P増加
・尿閉

※その他、異変を感じた場合は直ぐに医師の診察を受け指示に従ってください。

使用に注意が必要な方
使用出来ない方

使用が出来ない方
・18歳未満の肥満、閉塞性睡眠時無呼吸症候群または重篤な肺疾患を患っている方
・てんかんの患者の方
・けいれん発作を起こしやすい方、けいれん発作を起こしたことがある方
・薬物乱用、薬物依存傾向のある方
・呼吸抑制状態にある方
・脳に器質的障害のある方
・オピオイド鎮痛剤により過敏症の既往歴のある方
・ショック状態にある方
・腎機能障害のある方
・肝機能障害のある方
・妊婦の方
・授乳中の方
・小児の方
・高齢者の方

上記にあてはまる方は、トラマドール塩酸塩を使用する事が出来ない可能性があります。
トラマドール塩酸塩を使用する前に、医師又は薬剤師に使用しても問題ないか必ず確認をして下さい。

併用禁忌薬

併用注意薬
〇オピオイド鎮痛剤中枢神経抑制剤
・フェノチアジン系薬剤
・催眠鎮静剤など

〇三環系抗うつ薬
 セロトニン作用薬
・選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)等

〇リネゾリド

〇アルコール

〇カルバマゼピン

〇キニジン

上記を使用している方は、トラマドール塩酸塩を使用する事が出来ない可能性があります。
トラマドール塩酸塩を使用する前に、医師又は薬剤師に使用しても問題ないか必ず確認をして下さい。

併用禁忌薬
〇モノアミン酸化酵素阻害剤
・セレギリン塩酸塩(エフピー)
・ラサギリンメシル酸塩(アジレクト)
・サフィナミドメシル酸塩(エクフィナ)

〇ナルメフェン塩酸塩水和物
・セリンクロ

上記の併用禁忌薬に入ってないからといって、その他の医薬品と併用するのは危険です
現在、薬を服用している場合は、併用可能かどうか必ず医師に相談してください。

よくある質問
食事による影響はありますか?

血漿中のトラマドール塩酸塩の濃度は空腹時、食後で変わりがないので、影響は無いと言えるでしょう。

透析をしていますが、トラマドール塩酸塩は除去されますか?

トラマドール塩酸塩は透析によってほとんど除去されないとされています。

量を多く飲んでしましました

量によっては中毒症状として嘔吐、昏睡、呼吸停止等の重い症状が発生する場合があります。医師にご相談ください。

保存はどうすればいいですか?

薬局で渡された状態での包装の場合は室温で保存してください。一包化(1つの容器等にまとめる)した場合は、高温多湿を避けて保存してください。

割ったり砕いたりして飲んでもいいですか?

ワントラム錠100mg、ツートラム錠50mg・100mg・150mgの場合は絶対にそのようなことはしないでください。重大な副作用が発現する可能性があります。トラマールOD錠の場合は可能です。

薬が余ったのですがどうしたらいいですか?

廃棄してください。他の症状に対しては使用しないでください。廃棄に関してご不明な点は薬剤師にご相談ください。

サイト利用に関する注意事項

医薬品を使用する場合、必ず医師や薬剤師の指示に従って下さい。
医薬品を使用し、体調不良が現れた場合、我慢せずに直ちに医師の診察を受け、指示に従って下さい。