成分名 |
クロザピン |
適応症状 |
治療抵抗性統合失調症 |
簡易説明 |
クロザピンは、心の不調を調整し、気持ちをおだやかにする薬です。
統合失調症という病気に対して使用します。
心の病気の1つである統合失調症は、脳の情報伝達が混乱してしまう病気で、考えや感情のコントロールができなくなってしまったり、幻覚や妄想などを引き起こします。統合失調症の多くは、薬物療法によってこれらの症状を改善するこができますが、中には薬の効果が得られなかったり、副作用によってそもそも薬を飲むことができない場合もあります。これを治療抵抗性統合失調症と言います。
クロザピンは治療抵抗性統合失調症の治療における最後の切り札とされている薬です。
しかしながら、発売後に重篤な副作用が問題となり、世界的に製造販売が一時的に停止されたという経緯があります。その後、既存薬での治療ができない場合においての有用性が再評価され、再び使用されるようになりました。命にかかわるような副作用が確認されているという大きな問題がある為、限られた場合にのみ使用され、一定基準を満たす登録医療機関のみでしか処方・調剤できません。原則として入院治療のもと使用します。 |
処方可能な診療科目 |
精神科など(クロザリル患者モニタリングサービスに定められた要件をすべて満たす施設のみ) |
健康保険の適応 |
健康保険適応 |
病院で処方してもらう時の費用目安 |
診察料などの目安 :約1000円前後
薬代1錠あたりの目安:クロザリル錠25㎎ 89.3円/錠、クロザリル錠100㎎ 314.9円/錠
薬代後発薬1錠の目安:個人輸入としてスキゾリル100㎎ 31.8円/錠
病院によって差が有り薬代の他に、初診料・診察料・検査料などが必要となります。また、健康保険の負担割合によっても異なります。
統合失調症については、高額療養費制度や自治体の助成制度の対象になる可能性があります。この場合患者の年齢、所得水準によっても異なってきます。それぞれの申請先に相談してください。 |
厚生労働省による認可、または発売年月日 |
2009/7/1 |
国内のジェネリック認可 |
現在国内でのジェネリック医薬品の製造はありません。 |
関連製品(先発薬) |
クロザリル錠25㎎/クロザリル錠100㎎(ノバルティスファーマ) |
関連製品(ジェネリック) |
個人輸入としてスキゾリル100㎎(インタスファーマ) |
海外での使用実績 | 1969年にオーストラリアで承認されて以降、たくさんの国で統合失調症の治療薬として承認されていました。しかし、1975年にフィンランドで発売後6カ月間で8例の死亡例を含む16例で無顆粒球症の発症が報告されました。このことにより、各国で一次販売中止または開発中止の措置がとられました。
再評価の末、「治療抵抗性統合失調症」に適応を限定する、定期的に血液検査を実施するなどの厳しい管理課のもと、販売が再開されました。現在では多くの国で、治療抵抗性統合失調症治療薬として承認されています。
アメリカ、イギリス、オーストラリアなどでは、Clozaril Patient Monitoring Serviceと呼ばれる制度を導入し、無顆粒球症の早期発見または発現時の早期対応が可能となっています。 |
効果・作用 |
統合失調症とは、脳の様々な情報を処理する働きをまとめられなくなってしまう病気です。それにより、様々な症状が現れます。また、その現れる症状については個人により様々です。
主な症状として、あるはずのないものがある、現実にはないことを事実だと信じこんでしまう陽性症状、感情が乏しくなったり意欲が低下してしまう陰性症状、物事の理解や判断などが鈍ってしまう認知機能障害の3つが挙げられます。
これらの症状を「自分自身が病気である」と認識できない病識の低下が、統合失調症の治療に影響していると考えられています。
治療には①薬物療法 ②心理社会的療法の2つがあります。クロザピンは①薬物療法において使用される薬です。
現在の治療では、できる限り1つの抗精神病薬で症状をコントロールできるようにするのが主流となっています。不安症や睡眠障害、うつ状態などを併発した場合には、それぞれの症状に合わせた薬が併用されることもあります。
抗精神病薬では、興奮などを鎮める、幻覚や妄想を落ち着かせる、再発を予防するといった効果から、統合失調症の治療の中心となっています。しかしこれらの作用の半面、服用し続けることが困難となってしまうような副作用も多数存在します。特に錐体外路症状やパーキンソン症状、ジストニア、アカシジアなどの症状は日常生活に及ぼす影響がとても大きいです。副作用に対する抗パーキンソン病薬が処方されることもありますが、患者さんによってはそれでもなお薬の服用を続けることが難しくなってしまうことがあるのです。クロザピンは、その場合にのみ使用される薬です。適応となるのは、入院患者さんの9%ほどと考えられています。
脳の中のドーパミン神経系の働きすぎを抑制し、陽性症状を抑えます。また、セロトニン受容体を遮断することにより、ドーパミン系の働きがよくなり、陰性症状も改善します。これらの働きは、大きくは一般的な抗精神病薬と同じような働きですが、クロザピンにおいては複数あるドパミン受容体のうち、他の抗精神病薬とは別の受容体に作用することにより一般的な副作用が出にくいと考えられていますが、その詳しい作用機序についてはいまだに解明されていません。
既存の抗精神病薬では効果が得られない患者さんのうち、60~70%の患者さんに効果があるとされています。錐体外路症状の副作用が少ない反面、血液障害や糖尿病のリスクについては高くなるといったことに注意が必要です。糖尿病では、命に危険を及ぼすほどの高血糖状態となっていることもあります。制度上認定された病院での入院管理のもと、服用しなければなりません。
日常生活においては、入院生活ではありますが、併用することに注意が必要な薬がたくさんあります。必ず医師に処方された通りの薬を服用するようにしましょう。
飲み始めの時期には、起立性低血圧を起こしやすいです。1つ1つの動作はゆっくりするように心がけましょう。口が渇いて不快な時は、うがいをしたり氷を口に含むこともおすすめです。体重の増えすぎには注意し、適度に体を動かすようにしましょう。
様々な副作用が報告されている薬です。体調が少しでもいつもと違うと感じるときには、すぐに主治医へ報告しましょう。早期に適切に対応すれば、大事にいたることはありません。
入院での治療が完了し在宅で服用するようになった場合には、運転などの危険をともなう作業は控えましょう。体調の変化には一層の気配りをし、定期受診は必ず守りましょう。 |
使用方法 |
成人:クロザピンとして初日に12.5㎎(25㎎錠の1/2)、2日目は25㎎を1日1回服用します。3日目移行は症状に合わせて1日25㎎ずつ増量し、3週間かけて1日200㎎まで増量していきます。1日量が50㎎以上になる場合には、2~3回に分けて服用します。
維持量は200~400㎎/日までとし、最高でも600㎎/日とされています。 |
副作用 |
以下重大な副作用の中にも挙げられている無顆粒球症により、販売後に一時製造販売が中止された経緯がある薬です。この薬の使用にあたっては、安易に行うのではなく、他に治療法がない場合のみ、厳重な管理のもで行うとされています。
重大な副作用
無顆粒球症・白血球減少症(2.6%)、好中球減少症(7.8%)、心膜炎(1.3%)、心嚢液貯留(5.2%)、高血糖(9.1%)、悪性症候群(1.3%)、てんかん発作・ミオクローヌス発作(1.3%)、痙攣(2.6%)、起立性低血圧(15.6%)、腸閉塞(5.2%)などをはじめ、頻度不明のものとして心筋炎、胸膜炎、糖尿病性昏睡、抗尿病勢ケトアシドーシス、失神、循環虚脱、肺塞栓症、劇症肝炎などがあげられます。
その他の副作用
高頻度のもの:傾眠(63.6%)、流涎方(46.8%)、白血球増加、肝機能検査値上昇(33.8%)、便秘・嘔吐・悪心などの消化器症状(30%前後)、頻脈(26.0%)、めまい(20.8%)、振戦(19.5%)、倦怠感(16.9%)、口渇・体重減少などの糖尿病様症状(15%前後)、好酸球増加(13.0%)、尿失禁(13.0%)、頭痛(10.4%)などがあります。
※その他、異変を感じた場合は直ぐに医師の診察を受け指示に従ってください。 |
使用に注意が必要な方 使用出来ない方 |
使用が出来ない方 ■クロザピンを配合した医薬品の添加物に、アレルギーをお持ちの方
下記、添加物にアレルギーをお持ちの方、クロザリルはアレルギー反応を起こしてしまう為、服用できません。
▼クロザリルの有効成分
クロザピン
▼代表薬の添加物
クロザリル錠25㎎・クロザリル錠100㎎共通:乳糖、トウモロコシデンプン、ポビドン、無水ケイ酸、ステアリン酸マグネシウム、タルク
【警告】
①Clozaril Patient Monitoring Service:CPMSに登録された医師・医療機関・薬局において、血液検査などの基準がすべて満たされていること
②重篤な副作用に十分に対応できる設備があること
③治療上の有益性が危険性を常に上回っていること
④定期的に血糖値等の測定や、臨床症状の観察を十分に行い、糖尿病性ケトアシドーシスや糖尿病性昏睡などの死亡に至る可能性のある副作用につい注意すること、糖尿病患者に対しての使用はより慎重に判断すること
⑤服用患者または代諾者に、クロザピンについて文書によって説明を行い、文書で同意を得てから治療を開始すること
⑥投与開始後18週間は原則として入院のもと治療を行うこと
これらのすべての条件が満たされなければ服用することができません。
■他に使用できない方
①クロザピン過敏症の患者さん
②4週間以内の血液検査で基準を満たしていない患者さん
③CPMS規定を守れない患者さん
④CPMS中止基準に該当後、再投与検討基準に該当していない患者さん
⑤骨髄機能障害がある患者さん
⑥骨髄抑制を起こす可能性のある薬を服用中、放射線療法・化学療法などの治療を行っている患者さん
⑦持効性抗精神病剤を服用している患者さん
⑧重度の痙攣疾患または未治療のてんかん患者さん
⑨アルコールや薬による急性中毒、昏睡状態の患者さん
⑩中枢神経抑制状態にある患者さん
⑪重度の心臓疾患のある患者さん
⑫重度の腎機能障害がある患者さん
⑬麻痺性イレウスの患者さん
⑭アドレナリン作動薬を投与されている患者さん(アナフィラキシーショック治療を除く)
使用に注意が必要な方 糖尿病の既往や家族例がある患者さん、過去に血液検査n中止基準により服用を中止したことがある患者さん、無顆粒球症や好中球減少症の既往のある患者さん、てんかんなどの既往のある患者さん、心・血管疾患、低血圧の既往または疑いがある患者さん、前立腺肥大・閉塞隅角緑内障のある患者さん、、長期臥床や脱水状態の患者さん、腎機能・肝機能障害がある患者さんは、症状の悪化をまねくおそれがある為、注意が必要です。
妊婦:治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ服用します。動物実験においては催奇形性はみとめられていませんが、性周期の乱れや、着床前死亡数の増加、流産、発育遅延が認められます。また、妊娠後期に抗精神病薬を服用する場合、新生児に哺乳障害や呼吸障害、傾眠、振戦、筋緊張の刺激などの症状があらわれたとの報告があります。
授乳婦:授乳しないことが望ましいとされています。(動物実験にて乳汁移行あり)
小児など:小児などを対象とした臨床試験は実施していません。
高齢者:抗コリン作用が現れやすく、適切に観察しながら慎重に服用する必要があります。
上記にあてはまる方は、クロザピンを使用する事が出来ない可能性があります。 クロザピンを使用する前に、医師又は薬剤師に使用しても問題ないか必ず確認をして下さい。 |
併用禁忌薬 |
併用注意薬 ①アルコール・中枢神経抑制剤:鎮静・傾眠などの作用が強くあらわれるおそれがあります。
②:ベンゾジアゼピン系薬剤:循環虚脱のリスクが高まり、心停止・呼吸停止にいたるおそれがあります。
③抗コリン作用薬:抗コリン作用が増強するおそれがあります。
④降圧剤:血圧低下や起立性低血圧の出現のおそれがあります。
⑤呼吸抑制作用を有する薬剤:呼吸抑制作用が増強される可能性があります。
⑥バルプロ酸:てんかん発作やせん妄出現の報告があります。
⑦リファンピシン・カルバマゼピン・フェニトイン:血中濃度の低下から、薬の効果の低下の可能性があります。
⑧オメプラゾール・ニコチン:血中濃度の低下から、作用が弱まる可能性があります。
⑨フルボキサミン・シプロフロキサシン:血中濃度上昇から効果が強まる可能性があります。
⑩カフェイン:途中カフェインの摂取を中断すると、血中濃度に変化を来すという報告があります。
⑪エリスロマイシン・シメチジン・イトラコナゾール・ボリコナゾール、セルトラリン、パロキセチン:血中濃度上昇の可能性があります。
上記を使用している方は、クロザピンを使用する事が出来ない可能性があります。 クロザピンを使用する前に、医師又は薬剤師に使用しても問題ないか必ず確認をして下さい。
併用禁忌薬 ①骨髄抑制を起こす可能性のある薬、放射線療法・化学療法:無顆粒球症の発現リスクが増大するおそれがある。
②持効性抗精神病剤(ハロペリドール注射液・フルフェナジン注射液・リスペリドン注射液・アリピプラゾール注射液):血中から消失するまでの時間の延長を起こし、副作用発現に対する速やかな対応ができなくなる為、薬剤が完全に消失するまではクロザピン服用はできません。
③アドレナリン作動薬:アドレナリンの作用が反転し、重篤な血圧低下を引き起こすおそれがあります。
上記の併用禁忌薬に入ってないからといって、その他の医薬品と併用するのは危険です 現在、薬を服用している場合は、併用可能かどうか必ず医師に相談してください。 |
よくある質問 |
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