イミグルセラーゼ(遺伝子組換え)

成分名

イミグルセラーゼ(遺伝子組換え)

適応症状

ゴーシェ病

簡易説明

イミグルセラーゼ(遺伝子組換え)はチャイニーズハムスターの卵巣細胞より産生された酵素です。製造工程でドナーウシ血清を使用し、セルバンク調製時にブタ脾臓由来のトリプシン、ウシ胎仔血清を使用しています。
ゴーシェ病の治療は従来、ヒト胎盤より抽出・生成されたセレデース(一般名:アルグルセラーゼ)による酵素補充療法が行われていましたが、供給量や未知の病原体による感染の可能性等の問題から遺伝子組換え製品の開発が進められてきました。
アメリカのGenzyme Corporation社は遺伝子組換え技術や細胞培養技術を応用して、β-グルコセレブロシダーゼの糖鎖修飾製剤セレザイム注200Uを開発し、1994年にアメリカで製造承認を取得しました。
日本国内では1996年より本剤の臨床試験が開始され、1989年に輸入承認を取得しました(希少疾病用医薬品)。その後、Genzyme Corporationが有効成分及び添加物濃度を2倍にした400単位製剤を開発し、日本国内でもセレザイム静注用400(以下、本剤)が2011年に発売されました。

※ゴーシェ病(Gaucher disease)
ゴーシェ病はグルコセレブロシダーゼの活性低下・欠損により発生する先天代謝異常症です。血液学的異常(貧血、血小板減少症)、肝脾腫、骨症状がおこります。日本では33万人に1人が発症すると推定されています。その66%は神経型です。
1型(非神経型)
幼児期から成人期まで様々な時期で発症しますが、日本国内では多くが思春期までに発症します。無症状で経過し血液検査などで偶然みつかることもありますが、重篤な症状を示す方も多くおられます。
2型(急性神経型:周産期致死型と古典型に大別されます。)
周産期致死型は最も重篤な病型で胎児死亡や新生児死亡率が高くなっています。生後まもなく筋緊張の異常や嚥下障害、無呼吸、痙攣などがあらわれ、旧劇に悪化します。
古典型は乳児期(3~6ヵ月)より喘鳴、嚥下障害、呼吸障害などがおこり、次いで周産期致死型と同様の症状がおこり急激に悪化します。
3型(亜急性神経型)
2型より多くの発症時期、重症度、進行速度があり、進行速度は2型より緩やかです。

処方可能な診療科目

小児科

健康保険の適応

ゴーシェ病の諸症状(貧血、血小板減少症、肝脾腫及び骨症状)の改善

病院で処方してもらう時の費用目安

この薬は処方薬ではありません(薬価記載)。
セレザイム静注用400単位(100mL1バイアル) 268,846.00円【製薬メーカー:サノフィ株式会社】

※ゴーシェ病は小児慢性特定疾患の対象疾患であるライソゾーム病(指定難病)に該当します。自己負担分の治療費の一部または全部が国または自治体により賄われることがあります。

厚生労働省による認可、または発売年月日

発売年月日:2011年3月18日

国内のジェネリック認可

現在ジェネリック医薬品の製造はありません。

関連製品(先発薬)

セレザイム静注用400単位【製薬メーカー:サノフィ株式会社】

関連製品(ジェネリック)

現在ジェネリック医薬品の製造はありません。

海外での使用実績

本剤は1994年5月にアメリカで承認、1997年11月にヨーロッパ15ヵ国で承認され、現在70ヵ国以上で販売されています。

効果・作用

ゴーシェ病はグルコセレブロシダーゼの活性低下や欠損によりマクロファージなどの細胞内皮系細胞(肝臓、脾臓、骨髄)にグルコセレブロシドという配糖体が溜まるため、肝脾腫、骨症状等の様々な症状がおこる病気です。
本剤はこのグルコセレブロシダーゼより効率よく標的細胞に取り込まれ、活性低下・欠損により生じる諸症状を改善します。
日本人5例での検討では、本剤60単位/kgを隔週で6ヵ月投与した結果、改善がみられました(改善した症例数:貧血4例、血小板減少3例、肝腫4例、脾腫3例全例)。またゴーシェ病で以上高値となる酸性フォスファターゼ:ACP、アンギオテンシン変換酵素:ACEは5例全例で低下しました。(低下率:ACP 25.4~67.3%、ACE 29.9~69.8%)。
アメリカ人15例での同様の試験では貧血11例、血小板減少症9例、肝腫8例、脾腫全例で改善しました。骨症状は7例でX線所見が改善し、ACP、ACEは14例で30%以上低下しました。また、3ヶ月ごとにヘモグロビン値を評価して50%減量しながら25~30ヶ月間の長期維持効果を確認すると、一定の効果が得られた場合であれば減量後も改善効果が維持することが確認されました。
一方、本剤はバイオ医薬品のため薬の成分(イミグルセラーゼ)を異物と認識して抗体が産生される可能性があります(【使用に注意が必要な方】参照)。このため、本剤を投与している方は定期的にIgG抗体検査を行う必要があります。過敏症があらわれた場合は、発現2時間以内にトリプターゼ濃度の測定、補体活性化試験、イミグルセラーゼの対する抗体検査のため、血液を採取し、‐20℃以下で保存します。
また、本剤投与中の方は、貧血の十分な改善効果を得るために適切な鉄剤の補充が必要になります。

使用方法

(初期量)
1回1㎏あたり60単位を隔週、1~2時間かけて点滴静注します。または1単位/kg/分を超えない注入速度で投与します。症状の程度により適宜増減します。
(維持量)
一定期間投与した後、良好な改善状態が持続している場合は、初期量より減量することができます。3~6ヵ月の間隔でさらに減量することができます。

副作用

副作用発現率(試用成績調査集計):27.27%(30/110)

【主な副作用】
蕁麻疹(4.55%)、発熱(3.64%)、嘔吐(2.73%)、ALT上昇・頭痛・湿疹(1.82%)
※ゴーシェ病の合併症に肺高血圧症があります。本剤投与中に肺高血圧症が認められたとの報告があります。

【重大な副作用】
アナフィラキシー:過敏症状(掻痒感、潮紅、蕁麻疹、血管浮腫、胸部不快感、呼吸困難、喘鳴、血圧低下、チアノーゼ、咳嗽、低血圧等)があらわれることがあるので、以上が認められた場合は適切な処置を行います。

※その他、異変を感じた場合は直ぐに医師の診察を受け指示に従ってください。

使用に注意が必要な方
使用出来ない方

使用が出来ない方
イミグルセラーゼ(遺伝子組換え)を配合した医薬品の添加物に、アレルギーをお持ちの方
下記、添加物にアレルギーをお持ちの方、セレザイムはアレルギー反応を起こしてしまう為、使用できません。 ※添付文書上の禁忌には設定されていません。
▼セレザイムの有効成分
イミグルセラーゼ(遺伝子組換え)
▼セレザイムの添加物
D-マンニトール、ポリソルベート80、クエン酸ナトリウム水和物、クエン酸水和物

※本剤はゴーシェ病の診断が確立した方のみに使用します。2型、3型のゴーシェ病の症状(特に骨症状)に対する効果は十分な有効性が示されていません。また、神経症状に対する有効性も確立していません。
※本剤の生殖機能、癌原性を確認する試験は行われていません。

使用に注意が必要な方
・本剤に対する抗体産生がみられた方、過敏症があらわれた方
抗体検査を実施した方341例の約15%にIgG抗体の産生がみられ、その約46%に過敏症状があらわれました。抗体産生は6ヵ月以内にみられることが多く、1年を経過すると抗体産生はまれになります。
・妊婦、産婦、授乳婦の方:安全性が確立していません。

上記にあてはまる方は、イミグルセラーゼ(遺伝子組換え)を使用する事が出来ない可能性があります。
イミグルセラーゼ(遺伝子組換え)を使用する前に、医師又は薬剤師に使用しても問題ないか必ず確認をして下さい。

併用禁忌薬

併用禁忌薬
なし

併用禁忌薬がないからといって、その他の医薬品と併用するのは危険です
現在、薬を服用している場合は、併用可能かどうか必ず医師に相談してください。

イミグルセラーゼ(遺伝子組換え)に関する
よくある質問
注射剤の調整法は?

投与に当たっては用時1バイアルを注射用水10.2mL で溶解し、1バイアルあたり10.0mL(400単位)を採取する。必要な薬液量を生理食塩液で希釈し、最終容量は100〜200mL とする。

イミグルセラーゼ(遺伝子組換え)(セレザイム インタビューフォーム)

【上記引用元:PMDA 医療用医薬品 情報検索】

適用上の注意は?

① 本剤を溶解するときは、本剤を室温程度に戻した後、注射用水で静かに溶解する。急激な振盪溶解は避けること。
② 溶解した時、肉眼で異物や変色の有無を確認し、それらを認めた場合は使用しないこと。
③ 1 ヵ月単位での投与量を基準にして、バイアル(400)単位で 1回の投与量を調節する(開封したバイアルは使いきる)ことが可能である。
④ 溶解後、直ちに生理食塩液で静かに希釈し、速やかに使用すること。溶解後は、次回投与用として保存しないこと。
⑤ 他の製剤との混注はさけること。
⑥ 0.2ミクロンの親水性ポリエーテルスルフォン製メンブレンフィルターが付いた輸液セットを使用すること。微小異物除去用のろ過網が組込まれた輸液セットは、目詰まりを起こすため使用しないこと。

イミグルセラーゼ(遺伝子組換え)(セレザイム 添付文書)

【上記引用元:PMDA 医療用医薬品 情報検索】

参考元一覧

イミグルセラーゼ(遺伝子組換え)(セレザイム 添付文書、インタビューフォーム) 【PMDA 医療用医薬品 情報検索】

ゴーシェ病診療ガイドライン2021 【日本先天代謝異常学会】

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