ボスチニブ水和物

成分名

ボスチニブ水和物

適応症状

慢性骨髄性白血病など

簡易説明

ボスチニブ水和物は、がん化した白血病細胞の増殖をまねくBcr-Ablチロシンキナーゼという蛋白のはたらきがあることから、選択的に阻害して抗腫瘍作用をあらわす薬で、慢性骨髄性白血病の治療に用いられます。
日本では、ファイザーがボシュリフの商品名で販売しています。2022年9月時点ではジェネリック(後発薬)は販売されていません。

処方可能な診療科目

内科/循環器科/脳神経内科など

健康保険の適応

健康保険適応

病院で処方してもらう時の費用目安

診察料などの目安 :約1000円~5000円程度
薬代1錠あたりの目安:100mg約3961円
※病院によって差が有ります。初診料・診察料・検査料などが必要になります。

厚生労働省による認可、または発売年月日

販売開始年月 : 2014年12月

国内のジェネリック認可

なし

関連製品(先発薬)

【製薬メーカー:ファイザー】
ボシュリフ錠100mg

関連製品(ジェネリック)

なし

海外での使用実績

・米国、イタリア、イギリスなどで骨髄性白血病患者を対象とした試験が行われました。
対象は初発の慢性期 CML 患者であり、18歳以上の患者で6ヵ月以内に慢性期 CML と診断(初回診断)されており、適切な肝機能、腎機能を有して、ECOG PSが 0又は1の患者を対象にしています。
試験方法としては、本剤及びイマチニブの開始用量は400mg(1 日1回、経口投与)として、食事及び水(200mL)と一緒に原則午前中に服用し、反応が不十分であったときは、本剤は最大600mg/日まで、イマチニブは最大 800mg/日まで増量可能としました。
また、毒性が発現した場合では300mg/日まで減量可能としました。
投与期間は主要治療期間として約12ヵ月間として、継続治療期間(又は長期追跡期間)は4年間としました。
結果として、分子遺伝学的大寛解(MMR)率は本剤投与群 47.2%、イマチニブ投与群 36.9%であり、イマチニブ投与群に対する本剤投与群の優越性が検証されています。

・アメリカ
2012年9月に「前治療に抵抗性または不耐容の成人の慢性期、移行期、または急性転化期のフィラデルフィア染色体陽性(Ph+)CML」を適応症として承認されています。
また、2017年12月に「初発の成人の慢性期Ph+ CML」への適応拡大の承認を取得しています。

・欧州
2013年3月に「少なくとも1つのチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)による前治療歴があり、イマチニブ、ニロチニブ、ダサチニブが適正な治療オプションとならない成人の慢性期、移行期、または急性転化期のPh+ CML」を適応症として承認を取得しています。
また、2018年4月に「初発の成人の慢性期Ph+ CML」への適応拡大の承認を取得しています。

効果・作用

ボスチニブ水和物は、白血病細胞の増殖に必要な異常なタンパク質による働きを選択的に阻害するはたらきがある抗腫瘍作用をあらわす薬です。
がん細胞は無秩序に増殖を繰り返すことから、正常な細胞を障害し転移を行うことで、本来がんのかたまりがない組織に対しても増殖します。
細胞増殖のシグナルを伝達する上で重要となる酵素にチロシンキナーゼがあり、細胞増殖において異常なチロシンキナーゼが作られてしまった場合は、無秩序な細胞増殖がおこります。
慢性骨髄性白血病(CML)では遺伝情報をもつ染色体に異常な変異がおこり、この染色体から異常なタンパク質(Bcr-Abl)が作られることにより、Bcr-Ablチロシンキナーゼが産生されて、無秩序な細胞増殖がおこって、Bcr-AblチロシンキナーゼはATPという物質によって活性化してその作用をあらわすことになります。
本剤は、変異した染色体から産生されるチロシンキナーゼに対して、ATPの代わりに結合することにより、このチロシンキナーゼの活性を抑えるはたらきで細胞増殖の指令を遮断して、がん細胞の増殖を抑える作用をあらわします。
本剤を使った治療における懸念点として、治療への抵抗性(耐性)や不耐容があります。
本剤はそれまでのイマチニブ、ダサチニブ、ニロチニブとは異なる構造状態のチロシンキナーゼに結合することで、それまでの薬剤に対して抵抗性をあらわす患者に対しても有効性が期待できるとされています。

使用方法

▼用法用量
・成人にはボスチニブとして1日1回500mgを食後経口投与します。ただし、初発の慢性期の慢性骨髄性白血病の場合には、1回投与量は400mgとします。なお、患者の状態により適宜増減するが、1日1回600mgまで増量できます。

副作用

重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行ってください。

▼肝炎、肝機能障害
肝炎、AST、ALT、γ-GTP、ビリルビン等の上昇を伴う肝機能障害等があらわれることがあります。観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行ってください。

▼骨髄抑制
血小板減少、貧血、白血球減少、好中球減少、顆粒球減少などがあらわれることがあります。観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行ってください。

▼体液貯留
心嚢液貯留、胸水、肺水腫、末梢性浮腫などがあらわれることがあります。急激な体重の増加、呼吸困難等の異常が認められた場合には投与を中止してください。また利尿剤を投与するなどの適切な処置を行ってください。

▼ショック、アナフィラキシー
アナフィラキシーを含む過敏症があらわれることがあります。観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行ってください。

▼心障害
QT間隔延長、不整脈、心筋梗塞、心房細動などがあらわれることがあります。観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行ってください。

▼感染症
鼻咽頭炎、胃腸炎、肺炎、尿路感染、敗血症などの感染症があらわれることがあります。観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行ってください。

▼出血
脳出血、胃腸出血、膣出血、眼出血、口腔内出血などがあらわれることがあります。観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行ってください。

▼膵炎
膵炎があらわれることがあります。観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行ってください。

▼間質性肺疾患
間質性肺疾患があらわれることがあります。観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行ってください。

▼腎不全
腎不全があらわれることがあります。観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行ってください。

▼肺高血圧症
肺高血圧症があらわれることがあります。異常が認められた場合には投与を中止して、他の病因(胸水、肺水腫等)との鑑別診断を実施した上で、適切な処置を行ってください。

▼腫瘍崩壊症候群
腫瘍崩壊症候群があらわれることがあります。異常が認められた場合には投与を中止して、適切な処置(生理食塩液、高尿酸血症治療剤の投与、透析等)を行うとともに、症状が回復するまで患者の状態を十分に観察してください。

▼中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、多形紅斑
中毒性表皮壊死融解症、皮膚粘膜眼症候群、多形紅斑があらわれることがあります。観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行ってください。

その他の副作用
無力症/浮腫/体重増加/感染/高血圧/紅斑/丘疹/皮膚乾燥/ざ瘡/脱毛症/蕁麻疹/皮膚病変/湿疹/光線過敏性反応/皮膚色素過剰/脂漏性皮膚炎/皮膚炎/皮膚剥脱/薬疹/剥脱性発疹/皮脂欠乏性湿疹/皮膚色素減少/皮膚色素沈着障害/白斑/皮膚過角化/手足症候群/全身紅斑/爪破損/浮動性めまい/味覚異常/不眠症/錯感覚/傾眠/嗜眠/記憶障害/末梢性ニューロパチー/不安/末梢性感覚ニューロパチー/可逆性後白質脳症症候群/肋間神経痛/末梢冷感/呼吸器感染/毛包炎/気管支炎/帯状疱疹/膀胱炎/百日咳/癜風/眼部腫脹/眼乾燥/回転性めまい/結膜炎/結膜充血/メニエール病/視神経乳頭浮腫/耳鳴/難聴/網膜色素沈着/咳嗽/口腔咽頭痛/発声障害/呼吸不全/鼻閉/鼻漏/心膜炎/心拡大/心室性期外収縮/僧帽弁閉鎖不全症/リンパ球減少/好酸球増加症/フィブリノゲン増加/発熱性好中球減少症/プロトロンビン時間延長/白血球増加/INR減少/INR増加/プロトロンビン時間短縮/便秘/消化不良/腹部膨満/腹部不快感/鼓腸/胃炎/口内炎/消化器痛/食道炎/口内乾燥/肛門周囲痛/歯痛/歯肉炎/口唇炎/歯周炎/裂肛/口腔内白斑症/消化管びらん/舌炎/便潜血/低リン酸血症/カリウム減少/カルシウム減少/脱水/アルブミン減少/高カリウム血症/ナトリウム減少/マグネシウム減少/ナトリウム増加/高血糖/高脂血症/カルシウム増加/クロール減少/総蛋白減少/アルブミン増加/コリンエステラーゼ減少/抗利尿ホルモン不適合分泌/アミラーゼ増加/アミラーゼ減少/クレアチニン増加/尿酸増加/腎機能障害/BUN増加/尿中蛋白陽性/尿中糖陽性/尿比重異常/関節痛/筋肉痛/クレアチンホスホキナーゼ増加/四肢痛/骨痛/筋痙縮/背部痛/筋骨格痛/筋力低下/クレアチンホスホキナーゼ減少/骨壊死/変形性関節症/体重減少/胸痛/疼痛/インフルエンザ/悪寒/LDH増加/挫傷/顔面浮腫/血尿/薬物過敏症/粘膜炎症/感覚消失/多汗症/鼻出血/結膜出血/寝汗/喀血/関節リウマチ/胸膜炎/耳新生物/皮下出血/膀胱がん

※その他、異変を感じた場合は直ぐに医師の診察を受け指示に従ってください。

使用に注意が必要な方
使用出来ない方

使用が出来ない方
■ボスチニブ水和物を配合した医薬品の添加物に、アレルギーをお持ちの方
下記、添加物にアレルギーをお持ちの方は、ボシュリフにアレルギー反応を起こしてしまう為、服用できません。

▼ボシュリフの有効成分
ボスチニブ水和物
▼代表薬の添加物
結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウム、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール、ポビドン、ステアリン酸マグネシウム、ポリビニルアルコール(部分けん化物)、酸化チタン、マクロゴール4000、タルク、黄色三二酸化鉄

■妊婦又は妊娠している可能性のある女性
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないでください。

使用に注意が必要な方
■心疾患又はその既往歴のある患者
心疾患又はその既往歴のある患者は、心疾患が悪化することがあります。観察を十分に行い、このような症状があらわれた場合には、投与を中止することが望ましいですが、やむを得ず投与を続ける必要がある場合には、慎重に投与してください。

■QT間隔延長のおそれ又はその既往歴のある患者
T間隔延長のおそれ又はその既往歴のある患者は、QT間隔延長が起こるおそれがあります。観察を十分に行い、このような症状があらわれた場合には、投与を中止することが望ましいですが、やむを得ず投与を続ける必要がある場合には、慎重に投与してください。

■他のチロシンキナーゼ阻害剤に不耐容の慢性骨髄性白血病患者
他のチロシンキナーゼ阻害剤に不耐容の慢性骨髄性白血病患者は、前治療薬の副作用の内容を確認してから投与してください。本剤を投与する際には、慎重に経過観察を行ってください。また副作用発現に注意してください。前治療薬の投与中止の原因となった副作用と同様の副作用が起こるおそれがあります。

■B型肝炎ウイルスキャリアの患者又は既往感染者(HBs抗原陰性、かつHBc抗体又はHBs抗体陽性)
B型肝炎ウイルスキャリアの患者又は既往感染者は、本剤の投与開始後は継続して肝機能検査や肝炎ウイルスマーカーのモニタリングを行うなどの、B型肝炎ウイルスの再活性化の徴候や症状の発現に注意してください。Bcr-Ablチロシンキナーゼ阻害剤の投与によりB型肝炎ウイルスの再活性化があらわれることがあります。

■中等度又は重度の腎機能障害のある患者
中等度又は重度の腎機能障害のある患者は、減量を考慮するとともに、患者の状態をより慎重に観察して、有害事象の発現に十分注意してください。本剤の血中濃度が上昇することがあります。

■肝機能障害患者
肝機能障害患者は、減量を考慮するとともに、患者の状態をより慎重に観察して、有害事象の発現に十分注意してください。本剤の血中濃度が上昇することがあります。

■生殖能を有する者
妊娠可能な女性に対しては、本剤投与中及び最終投与後一定期間は適切な避妊を行うよう指導してください。

■授乳婦
授乳しないことが望ましいです。ラットによる動物実験でボスチニブ又はその代謝物が乳汁中に移行することが報告されています。

■小児等
小児等を対象とした臨床試験は実施していません。

■高齢者
高齢者は生理機能が低下していることが多いことから、観察を十分に行い慎重に投与してください。

上記にあてはまる方は、ボスチニブ水和物を使用する事が出来ない可能性があります。
ボスチニブ水和物を使用する前に、医師又は薬剤師に使用しても問題ないか必ず確認をして下さい。

併用禁忌薬

併用注意薬
・CYP3A阻害剤
 アゾール系抗真菌剤(イトラコナゾール、ケトコナゾール、フルコナゾール、ボリコナゾール等)
 マクロライド系抗生物質(クラリスロマイシン、エリスロマイシン等)
 HIVプロテアーゼ阻害剤(リトナビル等)
 カルシウム拮抗薬(ジルチアゼム塩酸塩、ベラパミル塩酸塩等)
 抗がん剤(イマチニブメシル酸塩等)
 アプレピタント、トフィソパム、シプロフロキサシン等
・グレープフルーツ含有食品
・CYP3A誘導剤
 フェニトイン、カルバマゼピン、リファンピシン、リファブチン、フェノバルビタール、 ボセンタン、エファビレンツ、モダフィニル、エトラビリン等
 セイヨウオトギリソウ含有食品
・胃内pHに影響を及ぼす薬剤
 プロトンポンプ阻害剤(ランソプラゾール等)

上記を使用している方は、ボスチニブ水和物を使用する事が出来ない可能性があります。
ボスチニブ水和物を使用する前に、医師又は薬剤師に使用しても問題ないか必ず確認をして下さい。

併用禁忌薬
なし

併用禁忌薬がないからといって、その他の医薬品と併用するのは危険です
現在、薬を服用している場合は、併用可能かどうか必ず医師に相談してください。

よくある質問
ボスチニブ水和物はどのようなタイプの抗がん剤ですか?

ボスチニブ水和物は分子標的薬と呼ばれる新しいタイプの抗がん剤で、がん細胞の増殖を指令するシグナル伝達経路を分子レベルで遮断することで効果をあらわします。

ボスチニブ水和物を使用中は検査が必要だと聞きました。

ボスチニブ水和物の使用にあたっては、副作用や効果をチェックするため、飲み始めだけでなく定期的に検査が必要です。血液検査、肝機能検査、腎機能検査をはじめ、体重測定や心電図検査も行います。

サイト利用に関する注意事項

医薬品を使用する場合、必ず医師や薬剤師の指示に従って下さい。
医薬品を使用し、体調不良が現れた場合、我慢せずに直ちに医師の診察を受け、指示に従って下さい。