パルボシクリブ

成分名

パルボシクリブ

適応症状

<カプセル剤>
手術不能又は再発乳がん(本剤の投与を行う場合にはホルモン受容体陽性/HER2陰性の患者を対象としています)
<錠剤>
ホルモン受容体陽性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳がん

簡易説明

2011年の女性乳がんの罹患数は、約72,500人と、女性のがんの中では最も多く、約20%を占めると言われています。手術で取り切れるような早期の乳がんでは、5年生存率は80%を超えます(StageⅠ~Ⅱでは90%を超える)ので、治癒することが可能な比較的予後の良いがんとして知られています。ただし、発見時に手術ができない(手術不能)の乳がんや、再発した乳がんでは5年生存率は30%と、治癒を見込むのは難しくなってしまい、基本的には延命目的の治療に切り替わっていきます。
乳がんはがん細胞の性質によって行う薬物療法が異なり、この薬の適用はホルモン陽性の乳がんで、ホルモン療法が基本となります。ホルモン陽性の乳がんに対してはCDK4/6阻害薬が使用でき、パルボシクリブはホルモン療法と併用して使用できる薬になります。

処方可能な診療科目

産婦人科など

健康保険の適応

健康保険適用

病院で処方してもらう時の費用目安

診療代の目安:1,000~2,000円
薬代の目安:イブランス錠50mg1錠/5679.7円 125mg1錠/22978.1円
病院によって差があり、診察代の他に診察料・初診料・検査料などが必要になってきます。
高額療養費制度の対象になるため患者の年齢、所得によっても異なってきます。

厚生労働省による認可、または発売年月日

2017年9月27日カプセル剤承認、2020年1月23日錠剤承認

国内のジェネリック認可

なし

関連製品(先発薬)

イブランス錠125mg/イブランス錠25mg(ファイザー)

関連製品(ジェネリック)

なし

海外での使用実績

アメリカで承認され、ファイザー社によって販売されています。アメリカでさまざまな研究や臨床実験が行われ、ホルモン陽性の乳がんに対して他のホルモン療法と併用して服用していくことで効果があることが確認されています。
また2016年11月にEUで承認され、アロマターゼ阻害剤と併用するか、フルベストラントと組み合わせて、以前に内分泌療法を受けた女性に対して用いられています。閉経前または閉経前後の女性では、黄体形成ホルモン放出ホルモンアゴニストも投与する必要があるとされています。
ところがPALOMA-2試験という試験では、パルボシクリブとレトロゾールで治療された患者の70%以上が、40か月までにがんが進行したという報告があるため、健康経済分析ではパルボシクリブが費用対効果の高い薬であるとは判明していないことから、世界的に薬剤全体の普及を阻害している事実もあります。

効果・作用

本来の正常な細胞では、S期→G2期→M期→G1期というサイクルで細胞分裂が繰り返されています。再び細胞分裂を繰り返すためには、Rというポイントを通過する必要があります。CDK4およびCDK6という物質とサイクリンDという物質の複合体は、網膜芽細胞腫タンパク質であるRbのリン酸化を促進させます。これによりがん化した細胞はRを通過し、分裂することによってサイクルに入ってきます。そしてこのチェックポイントに関与するタンパク質の調節は、Rbのリン酸化の時点で多くが失われているため、がん細胞が増殖してしまいます。がん細胞が細胞分裂を繰り返すことによって、全身への転移などがみられるようになります。それを防ぐためには CDK4/6を阻害することにより、サイクリンD-CDK4/6複合体がRbのリン酸化を助けることができないようにしなければいけません。
そのため従来のホルモン陽性乳がん治療は、エストロゲンの分泌を抑制させたり、受容体への結合を抑制させたりするホルモン療法薬が中心でした。
そしてパルボシクリブは、CDK4/6を選択的に阻害する新たな作用機序を有した薬剤であり、がん細胞のCDK4/6を阻害することで、がん細胞がG1期からS期へ移行するのを阻害する目的で使用されます。その結果としてがん細胞の増殖を抑制する働きを持っています。
また、サイクリンDを抑制する目的で、基本的にはホルモン療法(アロマターゼ阻害薬、フルベストラント)と併用して使用していきます。ホルモン陽性の乳がんに対しては、ホルモン療法との併用によって効果がみられたため、基本的にはホルモン療法薬と併用していきます。

使用方法

<カプセル剤>
内分泌療法剤との併用において、通常、成人にはパルボシクリブとして1日1回125mgを3週間連続して食後に経口投与し、その後1週間休薬します。これを1サイクルとして投与を繰り返します。なお、患者の状態により適宜減量します。
<錠剤>
内分泌療法剤との併用において、通常、成人にはパルボシクリブとして1日1回125mgを3週間連続して経口投与し、その後1週間休薬します。これを1サイクルとして投与を繰り返します。なお、患者の状態により適宜減量します。

副作用

主な副作用
発熱、脱毛症、発疹、皮膚乾燥、流涙増加、霧視、眼乾燥、食欲減退、味覚異常、鼻出血、悪心などがあります。

重大な副作用
骨髄抑制、好中球減少、白血球減少、貧血、血小板減少、発熱性好中球減少症、間質性肺疾患が起こることがあります。

その他の副作用
口内炎、下痢、嘔吐、疲労、感染症、尿路感染、上気道感染、口腔ヘルペス、歯肉炎、無力症、AST増加、ALT増加、腎機能障害、血中クレアチニン増加がみられることがあります。
副作用があらわれた場合は、次の基準を考慮して、休薬、減量又は投与を中止すること、なお本剤は75mg/日未満に減量しないこととされています。
減量して投与を継続する場合の投与量として、通常投与量:125mg/日ですが一次減量:100mg/日
二次減量:75mg/日となっています。副作用が出たからといって自己判断で減薬や休薬をせず、必ず医師の指示に従って服用してください。

※その他、異変を感じた場合は直ぐに医師の診察を受け指示に従ってください。

使用に注意が必要な方
使用出来ない方

使用が出来ない方
パルボシクリブを配合した医薬品の添加物に、アレルギーをお持ちの方
下記、添加物にアレルギーをお持ちの方、イブランス錠はアレルギー反応を起こしてしまう為、服用できません。
イブランス錠の有効成分
パルボシクリブ:125mg/25mg
▼イブランス錠の添加物
結晶セルロース、乳糖水和物、デンプングリコール酸ナトリウム、軽質、無水ケイ酸、ステアリン酸マグネシウム
(カプセル本体)
ゼラチン、酸化チタン、三二酸化鉄、、黄色三二酸化鉄

使用に注意が必要な方
次に当てはまる方は、使用に注意が必要です。
・合併症・既往歴等のある方
・過敏症の既往歴のある方
・間質性肺疾患のある方、又はその既往歴のある方
・妊娠可能な女性
・妊婦、授乳婦
・小児等
・高齢者

上記にあてはまる方は、パルボシクリブを使用する事が出来ない可能性があります。
パルボシクリブを使用する前に、医師又は薬剤師に使用しても問題ないか必ず確認をして下さい。

併用禁忌薬

併用注意薬
CYP3A酵素阻害剤、コビシスタットを含有する製剤、エルビテグラビルを含有する製剤、インジナビル、イトラコナゾール、リトナビル、テラプレビル、ボリコナゾール、クラリスロマイシン、ネルフィナビル、サキナビル、強いCYP3A誘導薬、フェニトイン、カルバマゼピン、リファンピシン類、リファブチン、フェノバルビタール、CYP3A酵素で代謝を受ける薬剤、ミダゾラム
フェンタニール
組み合わせに注意の必要な飲食物:グレープフルーツジュース、セントジョーンズワート(セイヨウオトギリソウ)を含むもの

上記を使用している方は、パルボシクリブを使用する事が出来ない可能性があります。
パルボシクリブを使用する前に、医師又は薬剤師に使用しても問題ないか必ず確認をして下さい。

併用禁忌薬
なし

併用禁忌薬がないからといって、その他の医薬品と併用するのは危険です
現在、薬を服用している場合は、併用可能かどうか必ず医師に相談してください。

よくある質問
錠剤の服用も食後ですか?

錠剤に関しては食事の有無や間隔によって左右されることはあまりないとされています。また、同系統の薬剤も数種類開発中との情報もあるため、食事との関連などを調べてみてもよいかもしれません。

ベージニオという薬との選択を迷っています。どのように決めればよいですか?

ベージニオの場合、似ていますが少し作用などが違ってきます。まず、1回150mを1日2回服用するという点や代謝酵素がCYP3Aのみであるという点も、パルボシクリブとは異なる点です。ただし、妊婦への投与に関して、パルボシクリブは禁忌扱いなのに対し、ベージニオは治療の有益性がリスクを高まる場合に服用することができます。「食前」「食後」の指定はなく、休薬期間も必須ではありません。副作用として下痢が起きやすいとされています。日本人では外国人と比較して肝機能障害と骨髄抑制の発現割合が高い傾向が認められています。以上のような観点を踏まえて医師とよく相談し、納得したうえで決定されることをおすすめします。

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