パゾパニブ塩酸塩

成分名

パゾパニブ塩酸塩

適応症状

悪性軟部腫瘍、根治切除不能又は転移性の腎細胞癌

簡易説明

パゾパニブ塩酸塩は主に血管内皮細胞増殖因子受容体(VEGFR)-1,-2,-3,血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)-α,-βおよび幹細胞因子受容体(c-Kit)に対して阻害作用を示すマルチキナーゼ阻害薬であり,低分子の経口投与可能な化合物です。マウスおよびウサギにおける血管新生モデルを用いた非臨床試験において,パゾパニブは血管内皮細胞増殖因子(VEGF)および塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)の併用による血管新生を阻害しました。また,SW-872ヒト脂肪肉腫細胞株およびSYO-1ヒト滑膜肉腫細胞株を用いたマウス異種移植モデルにおいて,腫瘍増殖を抑制したとの報告があります。進行性悪性軟部腫瘍患者に対する臨床試験では,日本を含む国際共同第III相臨床試験がパゾパニブ単独療法の有効性および安全性についてプラセボ対照により評価することを目的として実施され、その結果,無増悪生存期間(PFS)の中央値がパゾパニブ群で4.6ヵ月,プラセボ群で1.6ヵ月(ハザード比0.31,P<0.0001)と,パゾパニブ群ではプラセボ群と比較して統計学的に有意なPFSの延長が示されました。パゾパニブは本邦においてはこれらの非臨床試験および臨床試験成績に基づき,悪性軟部腫瘍の治療薬として2012年9月に承認され、同年11月より発売されています。

処方可能な診療科目

内科など

健康保険の適応

健康保険適用

病院で処方してもらう時の費用目安

診療代の目安:1,000~2,000円
薬代の目安:ヴォトリエント錠200mg1錠/4197.5円
病院によって差があり、薬代の他に診察料・初診料・検査料などが必要になります。

厚生労働省による認可、または発売年月日

2012年11月22日発売

国内のジェネリック認可

なし

関連製品(先発薬)

ヴォトリエント錠200mg/ノバルティス ファーマ

関連製品(ジェネリック)

なし

海外での使用実績

ベルギー、フランス、ハンガリー、オランダ、英国などで行われた外国第Ⅰ相臨床試験[忍容性試験;単回・反復投与(VEG10003 試験)、外国人を対象としたデータ])では、固形癌患者 63例を対象に本剤 50~2000mg を 1日1回、50mg 又は 100mg を週3回、あるいは 300mg 又は 400mg を週 3 回経口投与したときの忍容性及び安全性を検討しました。
4例に Grade 3の用量制限毒性が発現し、50mg の1日1回投与において、1例に錐体外路系の不随意運動、別の1例に小腸の転移病巣からの胃腸出血が発現し、両被験者とも試験を中止しました。。また、800mg の1日1回投与において、1例に尿蛋白及び高血圧、2000mg の1日1回投与において、1例に疲労が発現し、両被験者とも本剤を減量して試験を継続して様子を見ました。試験全体では、63 例中 28例(44%)に Grade 3以上の有害事象が発現し、主な事象(発現率 5%以上)は、高血圧(12 例:19%)及び下痢(3例:5%)であったと報告されています。
本試験では最大耐用量を推定できなかったが、本剤 800mg/ 日を超える用量で
は曝露量が頭打ちとなり、トラフ濃度が本剤の薬力学的作用の指標となる15µg/mL を超えたことから、800mg の1日1回経口投与が第Ⅱ相臨床試験の検討用量と考えられたという経緯があります。

効果・作用

悪性軟部腫瘍や根治切除不能又は転移性の腎細胞癌に対して効果があるとされています。
がん細胞が増殖する際のシグナル伝達に必要なキナーゼ(酵素)を阻害し抗腫瘍作用をあらわす薬です。
パゾパニブは主に VEGFR-1、2、3、PDGFR-α、β及び c-Kit に対して阻害作用を示す経口のマルチキナーゼ阻害薬です。パゾパニブは VEGFR 及びPDGFR の活性化を阻害し、悪性軟部腫瘍及び腎細胞癌の増殖に関わる血管新生を阻害することにより、腫瘍増殖を抑制すると考えられています。また、一部の悪性軟部腫瘍に対しては血管新生阻害作用を介さない直接的な腫瘍増殖抑制作用により抗腫瘍効果を発現する可能性も考えられます。マウスのレーザー誘発脈絡膜血管新生モデルにおける血管新生阻害作用の実験では、パゾパニブをレーザー照射の当日から 200mg/kg/ 日を 13 日間経口投与することにより、レーザー照射による病変面積の増加を有意に抑制しました。このことから、経口投与によってがん細胞の増殖を予防することができるとされています。
ヒト脂肪肉腫細胞株を用いたマウスのレーザー誘発脈絡膜血管新生モデルにおける血管新生阻害作用の実験においては、パゾパニブをレーザー照射の当日から 200mg/kg/ 日を 13 日間経口投与することにより、レーザー照射による病変面積の増加を有意に抑制しました。このことから、悪性腫瘍に対する予防・治療効果も十分に期待できる薬です。
医師は本剤の有効性及び安全性を十分理解した上で、適応患者の選択を行うことが必要となってきます。
臨床試験において、中等度の肝機能障害を有する患者に対する最大耐用量は200mgであることが確認されており、中等度以上の肝機能障害を有する患者に対して本剤200mgを超える用量の投与は、最大耐用量を超えるため推奨されていません。

使用方法

通常、成人にはパゾパニブとして1日1回800mgを食事の1時間以上前又は食後2時間以降に経口投与します。
なお、患者の状態により適宜減量します。最大量が定められているため、増量は基本的にありません。

副作用

主な副作用
貧血 、 頭痛 、 食欲減退 、 体重減少 、 味覚異常 、 発声障害 、 下痢 、 悪心 、 嘔吐 、 腹痛 、 消化不良があげられます。

重大な副作用
肝機能障害 、 AST上昇 、 ALT上昇 、 ビリルビン上昇 、 γ−GTP上昇 、 高血圧 、 出血 、 甲状腺機能障害 、 蛋白尿 、 重篤な感染症 、 高血圧クリーゼ 、 心機能障害 、 うっ血性心不全 、 左室駆出率低下 、 QT間隔延長 、 心室性不整脈 、 Torsade de pointes 、 動脈血栓性事象 、 心筋梗塞 、 狭心症 、 虚血性脳卒中 、 一過性脳虚血発作 、 心筋虚血 、 静脈血栓性事象 、 静脈血栓症 、 肺塞栓症 、 脳出血 、 喀血 、 消化管出血 、 血尿 、 肺出血 、 鼻出血 、 消化管瘻 、 ネフローゼ症候群 、 創傷治癒遅延 、 間質性肺炎 、 血栓性微小血管症 、 血栓性血小板減少性紫斑病 、 血小板減少 、 溶血性尿毒症症候群 、 破砕赤血球を伴う貧血 、 腎機能障害 、 膵炎 、 網膜剥離 、 飛蚊症 、 光視症 、 視野欠損 、 視力低下 、 肝不全 、 管理できない重症高血圧 、 腫瘍関連出血 、 消化管穿孔 、 可逆性後白質脳症症候群 、 覚醒低下 、 精神機能変化 、 皮質盲 、 視力消失があげられます。これらの副作用がみられた場合、速やかに受診してください。

その他の副作用
口内炎 、 便秘 、 毛髪変色 、 手掌・足底発赤知覚不全症候群 、 発疹 、 脱毛症 、 皮膚色素減少 、 皮膚乾燥 、 筋骨格痛 、 血小板減少症 、 好中球減少症 、 白血球減少症 、 疲労 、 粘膜炎 、 無力症 、 高カリウム血症 、 高血糖 、 浮動性めまい 、 末梢性ニューロパチー 、 不眠症 、 傾眠 、 徐脈<無症候性> 、 呼吸困難 、 咳嗽 、 気胸 、 口内乾燥 、 腹部膨満 、 口腔咽頭痛 、 胃炎 、 しゃっくり 、 痔核 、 嚥下障害 、 鼓腸 、 剥脱性発疹 、 皮膚そう痒症 、 皮膚障害 、 爪障害 、 ざ瘡 、 皮膚潰瘍 、 毛髪成長異常 、 筋肉痛 、 関節痛 、 筋痙縮 、 リンパ球減少症 、 赤血球増加症 、 血中クレアチニン増加 、 リパーゼ増加 、 血中アルカリホスファターゼ増加 、 LDH異常 、 血中ナトリウム減少 、 血中カルシウム減少 、 血中マグネシウム減少 、 血中尿素増加 、 血中リン減少 、 血中ブドウ糖減少 、 血中アルブミン減少 、 末梢性浮腫 、 浮腫 、 顔面浮腫 、 胸痛 、 霧視 、 ほてり 、 発熱 、 多汗症 、 脱水 、 腫瘍疼痛 、 悪寒 、 挫傷 、 不規則月経がみられることがあります。少しでも気になる症状があれば医師に相談してください。

※その他、異変を感じた場合は直ぐに医師の診察を受け指示に従ってください。

使用に注意が必要な方
使用出来ない方

使用が出来ない方
次の項目に当てはまる方は使用できません
・妊婦や産婦
次の項目に当てはまる方は慎重に投与、または投与に注意が必要です
・高齢者
・授乳婦
・新生児
・乳幼児
・小児
・妊娠が可能な年齢の女性(11歳目安)

併用禁忌薬

併用注意薬
次の薬剤と併用する場合は注意が必要です
プロトンポンプ阻害剤・エソメプラゾール・薬物代謝酵素<CYP3A4>を阻害する薬剤・ケトコナゾール・肝薬物代謝酵素<CYP3A4>を誘導する薬剤・カルバマゼピン・フェニトイン・パクリタキセル・ラパチニブ・シンバスタチン・抗不整脈剤・キニジン・プロカインアミド・ジソピラミド・クラリスロマイシン・イミプラミン・ピモジド・QTを延長する薬剤

上記を使用している方は、パゾパニブ塩酸塩を使用する事が出来ない可能性があります。
パゾパニブ塩酸塩を使用する前に、医師又は薬剤師に使用しても問題ないか必ず確認をして下さい。

併用禁忌薬
なし

併用禁忌薬がないからといって、その他の医薬品と併用するのは危険です
現在、薬を服用している場合は、併用可能かどうか必ず医師に相談してください。

よくある質問
記載されている病気以外に、有効とされている病気はありますか?

この薬はがん細胞の増殖と血管新生にかかわる受容体を阻害することにより、抗腫瘍効果を示すもので、いわゆるがん専用の薬です。そのため、現時点ではがん以外に作用することはないとされています。

飲み忘れてしまいました、どうすればいいですか?

飲み忘れたことに当日気が付いた場合は、その日の空腹時に速やかに服用してください。ただし、薬を飲む間隔は12時間以上空けて服用してください。翌日に気が付いた場合は、予定していた時間に1回分を服用してください。決して2回分を一気に服用してはいけません。誤って多くの量を服用してしまった場合は、速やかに医師や薬剤師へ相談してください。また、医師の指示なしに自己判断で服用をやめることはしないでください。

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医薬品を使用し、体調不良が現れた場合、我慢せずに直ちに医師の診察を受け、指示に従って下さい。