L-アスパラギナーゼ

成分名

L-アスパラギナーゼ

適応症状

〇急性白血病(慢性白血病の急性転化例を含む)
〇悪性リンパ腫

簡易説明

Lーアスパラギナーゼは、L-アスパラギンをアスパラギン酸へ加水分解する酵素になります。日本で認可されている医療用医薬品のL-アスパラギナーゼは急性白血病や悪性リンパ腫への効果が期待されております。
細胞が増殖するためには、L-アスパラギンと呼ばれるアミノ酸が必要になります。このL-アスパラギンは血液中や細胞内に存在しています。
正常な細胞は細胞内においてアスパラギン酸からタンパク合成によりL-アスパラギンを生成する事ができる為、細胞外から取り込む必要はありません。
がん細胞では細胞の増殖速度が速いため、また細胞内におけるタンパク合成機能が欠損している為、細胞内で合成されるL-アスパラギンだけでは必要量を補うことができません。その為細胞外からL-アスパラギンを取り込む事で栄養状態を維持します。
L-アスパラギナーゼは血中のL-アスパラギンを分解する事で、細胞外からL-アスパラギンが取り込めず、腫瘍細胞を栄養欠乏状態にすることで抗腫瘍効果を発揮するとされております。

処方可能な診療科目

内科/外科/整形外科/泌尿器科/産婦人科/血液内科/小児科等

健康保険の適応

健康保険適応

病院で処方してもらう時の費用目安

診察料などの目安  :約3,000円~6,000円
薬代1瓶あたりの目安:5000K単位:約2,309円/10000K単位:約3,962円
この医薬品に後発薬は発売されておりません。
病院によって差が有り薬代の他に、初診料・診察料・検査料などが必要になります。

厚生労働省による認可、または発売年月日

2005年9月15日(ロイナーゼ注として1971年6月25日):製造販売承認
2005年12月16日(ロイナーゼ注として1971年8月30日):薬価基準収載
1971年9月1日発売

国内のジェネリック認可

国内においてジェネリック医薬品の販売はありません。

関連製品(先発薬)

ロイナーゼ注用5000/10000【製薬メーカー:協和キリン株式会社】

関連製品(ジェネリック)

後発医薬品は現時点において販売されておりません

効果・作用

L-アスパラギナーゼは急性白血病並びに悪性リンパ腫に適応のある医薬品です。

【急性白血病とは】
血液細胞は骨の内部にある骨髄と呼ばれる部位で血液細胞の元となる造血幹細胞から増殖しながら分化して作られております。このような血液を作る過程において、未熟な血液細胞である骨髄芽球に何らかの遺伝子異常が起こることによって、癌化した細胞が無制限に増殖する事で白血病が発症するとされております。中でも急性白血病は、大きく急性骨髄性白血病と急性リンパ性白血病に分けられております。
【悪性リンパ腫とは】
造血器腫瘍の1つで、白血球の中のリンパ球が癌化したものを悪性リンパ腫と呼ばれております。リンパ球には、B細胞、T細胞、NK細胞等の種類があり、これらが癌化して無制限に増殖する事で発症するとされております。
いづれの疾患も血液のがんと言われており癌細胞の増殖を停止させることが治療の目的とされております。
ロイナーゼ注用はその特性上静脈内投与、また筋肉内投与の両方からのアプローチが可能な医薬品で選択肢に幅があることが特徴的です。

【作用部位・作用機序】
作用部位:腫瘍細胞
作用機序:L-アスパラギナーゼは生体内でL-アスパラギンをアスパラギン酸とアンモニアへ分解します。その結果として、生体内ではL-アスパラギンが枯渇してしまいます。
アスパラギン合成酵素を持たない白血病細胞はタンパク合成ができなくなると、結果細胞の増殖もできなくなります。
L-アスパラギン合成酵素を有する正常血液細胞と比較して、細胞増殖がより速い白血病細胞では、タンパク合成が追い付かない状況になり 細胞周期がG1期すなわちS期に移る前の準備期間で停止してしまい、アポトーシスに陥ります。
L-アスパラギナーゼはこれらの作用により白血病に対して抗腫瘍効果を発揮することが期待されております。
また、大腸菌由来のL-アスパラギナーゼにおいては、グルタミナーゼ活性作用も有しており、グルタミンの低下も起こることが報告されています。グルタミンはアスパラギン酸へのアミド基の供給源であるため、グルタミン低下も L-アスパラギナーゼの抗腫瘍効果の一端を担っていることが示唆されています。

使用方法

『静脈内投与』
通常、1日量体重1Kgあたり50~200K単位を連日又は隔日に点滴で静脈内に注入する。
年齢、全身状態により適宜増減する事とされております。

『筋肉内投与』
通常、1日1回体表面積1㎥あたり10000K単位を週3回、または1日1回体表面積1㎥あたり25000K単位を週1回、筋肉内に注入する。なお、患者の状態により適宜減ずるとされております。
筋肉内投与においては適宜増減ではないことに注意が必要です。

【注射剤の調整法】
1.静脈内投与する場合においては、最初に2~5mLの日局注射用水により溶解し、その溶液を更に補液で200~500mLに希釈して使用する事とされております。
2.筋肉内投与する場合においては、本剤5000K単位あたり日局注射用水又は5%ブドウ糖液0.5~1.0mLに溶解する事とされております。
3.日局生理食塩液で直接溶解した場合には、塩析の為白濁することがあります。その為、日局生理食塩液での溶解は避けることとされております。
4.主薬のL-アスパラギナーゼは水に極めて溶けやすいが、溶解後に蛋白分子が会合・凝集する事によって水に不溶な物質を形成する性質を有しているので、薬液は使用直前に調整し、速やかに使用する事が望ましいとされております。

副作用

重大な副作用
1)ショック、アナフィラキシー(頻度不明)
蕁麻疹、血管浮腫、悪寒、嘔吐、呼吸困難、意識混濁、痙攣、血圧低下等が現れやすい取れされております。
2)重篤な凝固異常(頻度不明)
脳出血、脳梗塞、肺出血等の重篤な凝固異常(フィブリノーゲン減少、プロトロンビン減少、プラスミノーゲン減少、AT-Ⅲ減少、プロテインC減少)等が現れることがあるとされております。
3)重篤な急性膵炎(頻度不明)
腹痛、嘔吐、アミラーゼ等の膵酵素の上昇等が現れることがあるとされております。また、膵内分泌機能障害により糖尿病が現れることがあるとのことです。
4)意識障害を伴う高アンモニア血症(頻度不明)
肝機能障害患者においては高アンモニア血症が現れやすいとされております。
5)中枢神経系障害(頻度不明)
脳症(可逆性後白質脳症症候群を含む)、昏睡、意識障害、見当識障害等が現れることがあるとされております。なお、広範な脳の器質的障害をきたし、死亡した症例があります。
6)重篤な肝障害(頻度不明)
肝不全等の重篤な肝障害が現れることがあるとされております。
7)骨髄抑制(頻度不明)
使用が長期間にわたると副作用が強くあらわれ、遷延性に推移することがあるとされております。
8)重度の感染症(頻度不明)
肺炎、敗血症等の重度の感染症が現れることがあるとされております。

その他の副作用
1)過敏症
発疹(5%以上)
2)肝臓
脂肪肝(5%以上)
肝機能障害(頻度不明)
3)腎臓
浮腫、高窒素血症(0.1~5%未満)
蛋白尿、利尿不全(頻度不明)
4)消化器
食欲不振、悪心、嘔吐、下痢(5%以上)
5)精神神経系
倦怠感(5%以上)
傾眠、不安、頭痛(0.1~5%未満)
6)投与部位
投与部位反応(硬結、疼痛、出血、血腫、膿瘍等)
7)その他
発熱(5%以上)
血管痛、耐糖能異常、高脂血症、唾液腺炎、耳下腺炎(頻度不明)

※その他、異変を感じた場合は直ぐに医師の診察を受け指示に従ってください。

使用に注意が必要な方
使用出来ない方

使用が出来ない方
本剤の成分に対し重篤な過敏症の既往歴のある患者

有効成分:Lーアスパラギナーゼ凍結乾燥品
添加剤:L-アスパラギン酸ナトリウム水和物、水酸化ナトリウム、リン酸

使用に注意が必要な方
(1)合併症・既往歴等のある患者
   ①膵炎又は膵炎の既往のある患者
   ②骨髄機能抑制のある患者
   ③感染症を合併している患者
   ④水痘患者
(2)腎機能障害患者:高窒素血症が現れることがある為
(3)肝機能障害患者:高アンモニア血症が現れやすいため
(4)生殖能を有する者
(5)妊婦
(6)授乳婦
(7)小児等
(8)高齢者

上記にあてはまる方は、L-アスパラギナーゼを使用する事が出来ない可能性があります。
L-アスパラギナーゼを使用する前に、医師又は薬剤師に使用しても問題ないか必ず確認をして下さい。

併用禁忌薬

併用注意薬
1)メトトレキサート:本剤がメトトレキサートの効果発揮に必要な細胞複製を阻害するためと推察されている。
2)プレドニゾロン:不明。
3)ビンクリスチン:本剤がビンクリスチンの肝臓での代謝を抑制するためと推察されている。
4)生ワクチン:本剤が免疫能を低下させることによる為。
5)糖尿病治療薬:本剤が血糖値を上昇させることによる為。
6)痛風治療薬:本剤が血中尿酸値を上昇させることによる為。

上記を使用している方は、L-アスパラギナーゼを使用する事が出来ない可能性があります。
L-アスパラギナーゼを使用する前に、医師又は薬剤師に使用しても問題ないか必ず確認をして下さい。

併用禁忌薬
報告なし

併用禁忌薬に入ってないからといって、その他の医薬品と併用するのは危険です
現在、薬を服用している場合は、併用可能かどうか必ず医師に相談してください。

よくある質問
治療の期間はどれくらいになるか?

治療の内容によって多少異なりますが、入院が必要な治療はおおよそ8~12カ月になると言われております。

筋肉内投与における体表面積はどのように計算されるのか?

体表面積の計算方法には藤本式、デュポア(Du Bois)式が上げられます。いづれの場合においても身長と体重を用いて計算されます。

ロイナーゼによる治療は単剤で行われるのか?

通常はステロイドとビンクリスチン(製品名:オンコビン)、Lーアスパラギナーゼ(製品名:ロイナーゼ)といった抗がん剤を組み合わせた多剤併用療法によって行います。

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医薬品を使用する場合、必ず医師や薬剤師の指示に従って下さい。
医薬品を使用し、体調不良が現れた場合、我慢せずに直ちに医師の診察を受け、指示に従って下さい。