シロリムス

成分名

シロリムス

適応症状

ラパリムス錠:リンパ脈管筋腫症/難治性リンパ管疾患(リンパ管腫(リンパ管奇形)/リンパ管腫症/ゴーハム病/リンパ管拡張症)
ラパリムスゲル:結節性硬化症の皮膚病変

簡易説明

シロリムスは、イースター島の土壌細菌から単離された、抗真菌作用を持つマクロライド化合物です。
医療用には、腎臓移植の際の臓器拒絶反応を抑えるための免疫抑制薬として以前から使用されていましたが、近年になって、リンパ管腫治療薬、癌治療薬など、適用の幅が広がってきています。
イースター島のポリネシア語名である「ラパ・ヌイ」と、「菌類から生じた抗生物質」を意味するマイシンとを組み合わせて、「ラパマイシン」と呼ばれることも多いです。

処方可能な診療科目

内科/皮膚科/整形外科 など

健康保険の適応

難治性リンパ管疾患(リンパ管腫、リンパ管腫症、ゴーハム病、リンパ管拡張症)(ラパリムス錠)にのみ、健康保険適応(2022年末時点)

病院で処方してもらう時の費用目安

診察料などの目安 :約,2000円~,5000円
薬代1錠あたりの目安:約1308.8円(ラパリムス錠)
薬代1gあたりの目安:約3926.4円(ラパリムスゲル)
病院によって差が有り薬代の他に、初診料・診察料・検査料などが必要になる。

厚生労働省による認可、または発売年月日

発売年月日:2014年12月(ラパリムス錠1mg)
発売年月日:2018年6月(ラパリムスゲル0.2%)

国内のジェネリック認可

現在ジェネリック医薬品の製造はありません。

関連製品(先発薬)

ラパリムス錠1mg【製薬メーカー:ノーベルファーマ】
ラパリムスゲル0.2%【製薬メーカー:ノーベルファーマ】

関連製品(ジェネリック)

現在ジェネリック医薬品の製造はありません。

海外での使用実績

日本国外ではラパミューン(Rapamune)としてファイザーから販売されています。

効果・作用

シロリムスは、イースター島の土壌から発見された放線菌を基として研究開発が行われ、当初は抗真菌薬として開発されていました。しかしながら、その後の研究で強力な免疫抑制作用と抗増殖作用を示すことが発見されてからは、その方向で主に使われるようになり、腎臓移植の際の臓器拒絶反応を抑えるための免疫抑制薬として、10年以上前から欧米では実際の医療に使用されています。

シロリムスの有効性は近年になってさらに研究され、免疫抑制剤としてだけでなく、さらに癌治療薬、リンパ管腫治療薬など適応が広がっています。基本的には、オーファンドラッグ(Orphan Drug:患者数が少なく、治療法が確立していない難病用医薬品)として使われます。

作用機序としては、増殖や栄養に関する細胞外からの情報が集約して細胞の働きを調節しているmTOR(エム・トール)という蛋白質の働きを抑えることがわかっており、mTOR阻害薬、とも呼ばれています。

代表的な適用症状であるリンパ脈管筋腫症(lymphangioleiomyomatosis:LAM)は、平滑筋様の腫瘍細胞(LAM細胞)が増殖し、肺に多発性嚢胞を形成する、緩徐進行性かつ全身性の腫瘍性疾患です。主に妊娠可能年齢の女性に発症し、進行に伴って労作時呼吸困難、咳嗽、血痰、乳び胸水などの症状や所見が出現し、自然気胸を反復することが多いです。腎臓などに血管筋脂肪腫を合併することもあります。LAM細胞では、TSC遺伝子異常によりmTORが過剰に活性化されているため、シロリムスがLAMに対する治療薬となると考えられるようになりました。

同様の作用で、細胞の過剰な増殖によって引き起こされる様々な症状を、シロリムスは緩和します。

新型コロナウイルス感染症予防・治療に関して

治療薬候補として有望であるという報告があります。

使用方法

<ラパリムス錠>
・リンパ脈管筋腫症
通常、成人にはシロリムスとして2mgを1日1回経口投与して下さい。なお、使用者の状態により適宜増減しますが、1日1回4mgを超えないで下さい。
・難治性リンパ管疾患
通常、シロリムスとして、体表面積が1.0㎡以上の場合は2mg、1.0㎡未満の場合は1mgを開始容量とし、1日1回経口投与して下さい。以後は、血中トラフ濃度や使用者の状態により投与量を調整しますが、1日1回4mgを超えないで下さい。

<ラパリムスゲル>
通常、1日2回、患部に適量を塗布して下さい。

副作用

重大な副作用
・間質性肺疾患
間質性肺疾患(肺臓炎、薬剤性肺障害、器質性肺炎を伴う閉塞性細気管支炎、肺線維症等)の症例が生じており、海外で死亡に至った例が報告されています。
・感染症
細菌、真菌あるいはウイルスによる重篤な感染症(肺炎/敗血症/蜂巣炎/尿路感染/腎盂腎炎/結核を含むマイコバクテリア感染/EB(エプスタイン・バール)ウイルス感染/CMV(サイトメガロウイルス)感染/単純ヘルペス/帯状疱疹 等]が発現又は悪化することがあります。
・消化管障害
口内炎/下痢/悪心/嘔吐/等が高頻度で認められています。
・アナフィラキシー
アナフィラキシー/血管浮腫/過敏性血管炎/等の過敏症反応があらわれることがあります。
・進行性多巣性白質脳症(PML)
進行性多巣性白質脳症(PML)があらわれることがあるので、本剤の治療期間中及び治療終了後は状態を十分に観察し、意識障害、麻痺症状(片麻痺、四肢麻痺)、言語障害等の症状があらわれた場合は、MRIによる画像診断及び脳脊髄液検査を行うとともに、投与を中止し、適切な処置を行って下さい。
・BKウイルス腎症
・体液貯留
末梢性浮腫、胸水、心嚢液貯留、腹水等があらわれることがあるので、頻脈等の異常が認められた場合には、心電図、心エコー、胸部CT検査を行うとともに、投与を中止するなど適切な処置を行って下さい。
・脂質異常症
高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、脂質異常症、血中コレステロール増加、高脂血症、脂質異常、等を生じる可能性があります。
・創傷治癒不良
創傷治癒に影響を及ぼす可能性が考えられ、治癒不良及び移植手術後にリンパ嚢腫及び創し開を含む創傷治癒不良、筋膜離開、瘢痕ヘルニア、吻合部離開(いずれも頻度不明)等があらわれることがあります。
・腎障害
蛋白尿、ネフローゼ症候群、巣状分節性糸球体硬化症、血中クレアチニン増加、等があらわれることがあります。
・皮膚障害
ざ瘡、ざ瘡様皮膚炎、発疹、剥脱性発疹、そう痒症、等があらわれることがあります。

その他の副作用
鼻咽頭炎/気管支炎/胃腸炎/咽頭炎/歯周炎/皮膚感染/上気道感染/口腔ヘルペス/歯肉炎/副鼻腔炎/膀胱炎/外陰部腟カンジダ症/外耳炎/細菌尿/麦粒腫/扁桃炎/感染性腸炎/唾液腺炎/インフルエンザ/憩室炎/歯槽骨炎/歯肉膿瘍/爪囲炎/ 膣感染/白癬感染/毛包炎/喉頭炎/白血球減少症/リンパ球減少症/貧血/食欲減退/低カリウム血症/高尿酸血症/高血糖/頭痛/浮動性めまい/不眠症/気分変化/味覚異常/
感覚障害/感覚鈍麻/記憶障害/傾眠/末梢性感覚ニューロパチー/結膜炎/眼乾燥/眼瞼浮腫/眼痛/霰粒腫/中耳の炎症/耳出血/耳痛/耳不快感/高血圧/出血/動悸/不整脈/上気道の炎症/呼吸障害/咳嗽/呼吸困難/口腔咽頭痛/鼻出血/気胸/発声障害/肺出血/気管支痙攣/急性呼吸不全/低酸素症/鼻粘膜障害/鼻閉/鼻漏/腹痛/便秘/口唇炎/胃腸障害/胃炎/下腹部痛/上腹部痛/消化不良/歯痛/歯周病/腹部不快感/口内乾燥/鼓腸/小腸閉塞/腸炎/腹部膨満/顎下腺腫大/口の錯感覚/ 歯肉痛/口腔内痛/胃食道逆流性疾患/肝機能異常/胆嚢炎/湿疹/色素沈着障害/爪破損/蕁麻疹/紅斑/爪線状隆起/毛細血管拡張症/ 皮膚炎/皮下出血/皮膚びらん/貨幣状湿疹/手掌/足底発赤知覚不全症候群/爪甲脱落症/そう痒性皮疹/多汗症/脱毛症/手皮膚炎/点状出血/皮下血腫/ 皮膚腫瘤/皮膚潰瘍/筋骨格障害/背部痛/関節痛/筋痙縮/鼡径部痛/顎痛/関節腫脹/筋骨格直/筋力低下/四肢痛/筋肉痛/尿生殖器出血/血尿/ 不規則月経/無月経/月経過多/月経困難症/月経障害/腟分泌物/卵巣嚢胞/性器出血/外陰腟乾燥/不正子宮出血/ 閉経期症状/無精子症/疼痛/発熱/倦怠/疲労感/胸痛/粘膜の炎症/圧痛/異常感/胸部不快感/浮腫/限局性浮/口渇/挫傷/白血球数減少/AST増加/ALT増加/体重減少/好中球数減少/尿蛋白/Al-P増加/血中ビリルビン増加/血小板数増加/体重増加/白球百分率数異常/ヘモグロビン減少/CRP増加/γ-GTP増加/LDL増加/

<ラパリムスゲル>
結膜炎/毛包炎/せつ/口腔ヘルペス/高トリグリセリド血症/錯感覚/眼瞼紅斑/眼刺激/眼充血/ほてり/鼻部不快感/急性膵炎/口内炎/皮膚乾燥/ざ瘡/皮膚嚢腫/皮膚炎/ざ瘡様皮膚炎/接触皮膚炎/湿疹/紅斑/そう痒症/発疹/そう痒性皮疹/脂漏性皮膚炎/皮膚刺激/蕁麻疹/乾皮症/皮脂欠乏症/皮膚出血/蛋白尿/精子数減少/適用部位刺激感/異常感/適用部位異常感覚/適用部位腫脹/適用部位出血/適用部位疼痛/血小板数増加/皮膚擦過傷

※その他、異変を感じた場合は直ぐに医師の診察を受け指示に従ってください。

使用に注意が必要な方
使用出来ない方

使用が出来ない方
<ラパリムス錠>
■使用禁止
・本剤の成分又はシロリムス誘導体に対し過敏症の既往歴のある方
・妊婦又は妊娠している可能性のある女性
・生ワクチンを接種している方
・下記、添加物にアレルギーをお持ちの方は、アレルギー反応を起こしてしまう為、使用できません。
▼ラパリムス錠1mgの有効成分
シロリムス
▼添加物
カルナウバロウ/結晶セルロース/酸化チタン/ステアリン酸マグネシウム/精製白糖/セラック/タルク/トコフェロール/乳糖水和物/ポビドン/ポリエチレングリコール8000/ポリエチレングリコール20000/ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール/モノオレイン酸グリセリン/硫酸カルシウム
<ラパリムスゲル>
■使用禁止
本剤の成分又はシロリムス誘導体に対し過敏症の既往歴のある方
・下記、添加物にアレルギーをお持ちの方は、アレルギー反応を起こしてしまう為、使用できません。
▼ラパリムスゲル0.2%の有効成分
シロリムス
▼添加物
カルボキシビニルポリマー/エタノール/2,2',2''-ニトリロトリエタノール
■使用注意
・妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性に対しては、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与して下さい。
・小児等
3歳未満の幼児等を対象とした有効性及び安全性を指標とした臨床試験は実施していません。

使用に注意が必要な方
<ラパリムス錠>
・肺に間質性陰影を認める方
間質性肺疾患が発症、重症化するおそれがあります。
・感染症を合併している方
免疫抑制により感染症が悪化するおそれがあります。
・肝炎ウイルス、結核等の感染又は既往歴を有する方
本剤の投与期間中又は投与終了後は、定期的に肝機能検査を行うなど、肝炎ウイルスの再活性化の徴候や症状の発現に注意して下さい。再活性化するおそれがあります。また、肝炎ウイルスキャリアの方は、本剤の投与期間中に肝炎ウイルスの再活性化を生じ、肝不全から死亡に至る可能性があります。
・中等度(Child-Pugh分類 Grade B)以上の肝機能障害がある方
投与量を半量から開始して下さい。血中濃度が上昇するおそれがあります。
・軽度(Child-Pugh分類 Grade A)の肝機能障害がある方
血中濃度が上昇するおそれがあります。
・生殖能を有する者
妊娠可能な女性には、投与期間中及び投与終了後少なくとも12週間は、適切な避妊を行うよう指導して下さい。
・授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討して下さい。動物試験(ラット)で母乳中へ移。行することが報告されています。
・小児等
低出生体重児、新生児、乳児、体表面積が0.6㎡未満の幼児又は小児を対象とした有効性及び安全性を指標とした臨床試験は実施されていません。
・高齢者
一般に生理機能が低下しているため、注意が必要です。

上記にあてはまる方は、シロリムスを使用する事が出来ない可能性があります。
シロリムスを使用する前に、医師又は薬剤師に使用しても問題ないか必ず確認をして下さい。

併用禁忌薬

併用禁忌薬
<ラパリムス錠>
・シクロスポリン/カルシウム拮抗剤(ジルチアゼム/ニカルジピン/ベラパミル)/抗真菌剤(フルコナゾール/イトラコナゾール/ケトコナゾール/ボリコナゾール 等)/マクロライド系抗生物質(エリスロマイシン/クラリスロマイシン 等)/メトクロプラミド/ブロモクリプチン/シメチジン/ダナゾール/レテルモビル/プロテアーゼ阻害剤(リトナビル等)
本剤の代謝酵素(CYP3A4等)が阻害され、本剤の血中濃度が上昇するおそれがあります。併用する場合には本剤を減量することを考慮するとともに、状態を慎重に観察し、副作用発現に十分注意して下さい。
・ミカファンギンナトリウム
本剤のAUCが21%上昇したとの報告があります。併用する場合は状態を慎重に観察し、本剤の副作用発現に注意し必要に応じて本剤の投与量を調節して下さい。
・グレープフルーツジュース
グレープフルーツジュースが腸管の代謝酵素を阻害することにより、本剤の血中濃度が上昇するおそれがあります。本剤服用時は飲食を避けて下さい。
・アンジオテンシン変換酵素阻害剤等
血管浮腫との関連性が示されている薬剤を服用している方は、血管浮腫(顔面、口唇、舌、咽頭の腫脹等)を発症するリスクが高まるおそれがあります。
・リファンピシン/リファブチン/抗てんかん剤(カルバマゼピン/フェノバルビタール/フェニトイン)
これらの薬剤の代謝酵素(CYP3A4等)誘導作用により本剤の代謝が促進されることにより、本剤の血中濃度が低下することがあるので、併用する場合には治療上の有益性が危険性を上回る場合にのみ使用して下さい。やむを得ず併用する場合には、本剤の有効性が減弱する可能性があることを考慮して下さい。
・ロルラチニブ
ロルラチニブがP-糖蛋白を誘導することにより本剤の血中濃度が低下し、有効性が減弱する可能性があります。
・セイヨウオトギリソウ(St.John's Wort、セント・ジョーンズ・ワート)含有食品
セイヨウオトギリソウの代謝酵素誘導作用により本剤の代謝が促進されるため、本剤の血中濃度が低下するおそれがあるので、本剤投与時はセイヨウオトギリソウ含有食品を摂取しないよう注意して下さい。

<ラパリムスゲル>
・PUVA療法等の紫外線療法
本剤の使用により光感受性が増強され、光線過敏症が発現するおそれがあります。

上記の併用禁忌薬に入ってないからといって、その他の医薬品と併用するのは危険です
現在、薬を服用している場合は、併用可能かどうか必ず医師に相談してください。

シロリムスに関する
よくある質問
LAM(リンパ脈管筋腫症)には種類や程度の差が色々ありますが、どのようなLAM患者が内服するとよいでしょうか。

大きく2点が推奨として述べられています。●異常な肺機能、あるいは肺機能が低下し続けているLAM患者には、経過観察するよりmTOR阻害薬を投与することを推奨する。●乳び液貯留のため自覚症状のあるLAM患者では、侵襲的治療を行う前にシロリムスによる治療を行うことを提案する。

どのようなLAM患者さんがシロリムスを内服したらよいでしょうか?

【上記引用元:気胸・肺のう胞スタディグループ】】

シロリムス(ラパマイシン)は寿命を延ばす効果があると聞きました。本当でしょうか。

ラパマイシンは現在、免疫抑制剤として、臓器移植後患者の拒絶反応抑制に使われている。ラパマイシンは動物実験でマウスの老化を遅らせ、寿命を延ばすことができると証明されている。2014年には、ラパマイシンの濃度が高いほどマウスの中間寿命がより長く延びたこと、またその効果には性差があって、メスのほうで顕著であったことを報告された。薬の試験で、使用した量に従って特定の効果が出るということは、特定の効果がその薬の作用によるものであることを強く示すことになる。

老化を治療する(その2)

【上記引用元:高度医療開発センター 先進医療開拓部門】】

参考元一覧

ラパリムス錠1mg【ノーベルファーマ】
シロリムスとその効果【高度医療開発センター 先進医療開拓部門】
シロリムスがCovid-19感染の治療薬候補として有望【高度医療開発センター 先進医療開拓部門】

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