フルダラビンリン酸エステル

成分名

フルダラビンリン酸エステル

適応症状

慢性リンパ性白血病の貧血/再発又は難治性のマントル細胞リンパ腫/再発又は難治性の低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫 など

簡易説明

フルダラビンリン酸エステルは抗癌剤成分の一つで、主に白血病やリンパ腫といった血液腫瘍の治療に用いられています。

癌細胞が増殖する際、癌細胞としての情報を持ったDNAを合成することが必要になるのですが、本成分にはそのDNA合成を阻止し、同細胞の増殖を抑制するはたらきがあります。

服用量が少なければ最大限の効果が出ず、多ければ副作用が起こりやすくなるので、「体表面積」から割り出した最適な量を服用することが大切になります。

処方可能な診療科目

血液内科/内科/耳鼻科 など

健康保険の適応

健康保険適応

病院で処方してもらう時の費用目安

診察料などの目安  :約3,000円~8,000円
薬代1錠あたりの目安:10mg 3,811円
病院によって差が有り薬代の他に、初診料・診察料・検査料などが必要になります。

厚生労働省による認可、または発売年月日

2007年7月(発売)

国内のジェネリック認可

ジェネリックなし

関連製品(先発薬)

フルダラ錠10mg(製薬会社:サノフィ)

関連製品(ジェネリック)

ジェネリックなし

海外での使用実績

カナダ 2002年8月20日承認
フランス 2005年4月27日承認
イタリア 2003年3月4日承認
英国 2004年11月2日承認
韓国 2005年9月1日承認
中国 2006年1月10日承認、他

効果・作用

本成分フルダラビンリン酸エステルは抗癌剤成分の一つです。

最初の癌細胞は、正常な細胞の遺伝子が10~20年またはそれ以上の年月をかけて何段階にも変化し、最終的に元の細胞に2~10個程度の傷がつくことで発生します。
一度発生すると、そこからは細胞分裂を行い、早い速度で無秩序に増殖を繰り返します。

増殖が進むと、正常な細胞を障害して組織を壊したり、元々癌細胞のなかった組織にまで転移して更に増殖を始めたりするようになります。

そうした増殖を食い止める一つの方法として、癌細胞が分裂する際に絶対必要な「癌細胞の情報をもつDNAが新たに合成されること」の阻止が挙げられます。

DNAは、すべての生体細胞中および一部のウイルスに存在するもので、遺伝子の本体といわれています。
そのいわれは、DNAが「アデニン」「グアニン」「シトシン」「チミン」の4種類の塩基を持ち、その配列順序によって遺伝子情報が決定することに起因しています。
なお塩基とは、窒素を含む環状の有機化合物の総称です。

4種類の塩基は一本の長い鎖の上に配列しています。
各々違う形をしてはいますが、
・アデニンとチミン
・グアニンとシトシン
の組み合わせではパズルのようにぴたりと填まる形状になっていて、普段はそれぞれ結合した状態で存在しています。

細胞分裂時にはその結合が外れて元の一本鎖に戻るのですが、その際、結合していた相手方の塩基も、同様に一本鎖上に配列した形になっています。

そうして2本の鎖が鋳型となり、その後それぞれに合う塩基配列を持った新しい鎖がやってきて、鋳型と結合します。これが新たなDNAが合成される仕組みです。

癌細胞のDNA合成を妨げるには、上記工程の一部もしくは全部を阻害しなければなりません。

ここで、4種類の塩基のうちアデニンとグアニンはいずれも「プリン骨格」と呼ばれる構造を持っていて、「プリン塩基」と呼ばれています。
そして本成分フルダラビンリン酸エステルも、プリン塩基と似た構造をしています。

そのため癌細胞の細胞分裂時、塩基同士の結合が外れて一本の鎖になったとき、鋳型と新たな鎖が結合する前に本成分がその鋳型に填まって結合し、元の癌細胞と同一のDNAが合成することを阻止します。

本成分はこのようにして癌細胞のDNA合成を阻害するため、その摂取により同細胞の増殖を抑える効果が得られるのです。

使用方法

通常、成人は
「フルダラビンリン酸エステルとして40mg/㎡(体表面積)を1日1回、5日間連続で服用し、その後23日間休薬」
を1クールとして、これを繰り返します。

1日量が各人の体表面積に応じて40~90mgと様々で、さらに腎機能の状態によって減量が必要な場合もありますので、必ず医師の指示に従って下さい。

副作用

主な副作用
咳、発熱、口内炎、鼻咽頭炎、咽頭炎、上気道炎、高尿酸血症、高カリウム血症、発疹、悪心、食欲不振

重大な副作用
骨髄抑制、汎血球減少、好中球減少、血小板減少、ヘモグロビン減少、赤血球減少、ヘモグロビン減少増悪、赤血球減少増悪、汎血球減少増悪、好中球減少増悪、血小板減少増悪、間質性肺炎、肺炎、呼吸困難、精神神経障害、錯乱、興奮、昏睡、けいれん発作、失明、末梢神経障害、腫瘍崩壊症候群、側腹部痛、血尿、低カルシウム血症、高リン酸血症、代謝性アシドーシス、腎不全、敗血症、重症日和見感染、B型肝炎ウイルスによる肝炎増悪、B型肝炎ウイルスによる劇症肝炎、致命的自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性血小板減少症、赤芽球癆、脳出血、肺出血、消化管出血、出血性膀胱炎、重篤な皮膚障害、皮膚粘膜眼症候群、Stevens-Johnson症候群、中毒性表皮壊死融解症、Toxic Epidermal Necrolysis、TEN、口腔粘膜発疹、心不全、進行性多巣性白質脳症、認知障害、PML、意識障害、麻痺症状、片麻痺、四肢麻痺、言語障害

その他の副作用
胃部不快感、下痢、便秘、頭痛、不眠、めまい、しびれ、感覚減退、体重減少、不整脈、動悸、ALT上昇、AST上昇、LDH上昇、ALP上昇、γ-GTP上昇、総ビリルビン上昇、血清アルブミン低下、血清総蛋白減少、ウロビリン尿、表皮剥離、蛋白尿、低ナトリウム血症、クレアチニン上昇、CRP上昇、疲労、脱力感、無力症、四肢痛、アレルギー性鼻炎、喘鳴、腹痛、消化不良、嘔吐、浮腫、皮膚そう痒症、BUN上昇、腰痛、筋肉痛、神経痛、味覚異常、倦怠感、多汗、潮紅、呼吸障害、低酸素、低酸素症、口唇疱疹、手指感覚異常、下肢知覚異常、視力障害、視神経障害、視神経炎、下垂手、錯感覚、脈拍数増加、代謝異常、膵酵素変化、黄疸、尿中結晶、疼痛、水痘、悪寒、インフルエンザ様症状、末梢性浮腫、粘膜障害

※その他、異変を感じた場合は直ぐに医師の診察を受け指示に従ってください。

使用に注意が必要な方
使用出来ない方

使用が出来ない方
■重篤な腎障害のある方
本成分フルダラビンリン酸エステルは腎から排泄されるため、排泄遅延により副作用が強く現れる危険性があります。

■妊婦や妊娠している可能性のある女性
胎児毒性、及び催奇形性が報告されています。

■ペントスタチンを使用中の方
■本成分により溶血性貧血を起こしたことのある方
■本成分に対し過敏症の既往歴のある方

使用に注意が必要な方
■感染症を合併している方
骨髄抑制により感染症が増悪する危険があります。

■ B型肝炎ウイルスキャリアのある方、または既往感染のある方
B型肝炎ウイルスの再活性化により肝炎、または劇症肝炎が現れるおそれがあります。
B型肝炎ウイルス増殖の徴候や症状の発現に十分ご注意ください。

■腎機能が低下している方
副作用が強く現れるおそれがあります。

■肝機能障害のある方
症状を悪化させる可能性があります。

■生殖能を有する方
性腺に対する影響を考慮する必要があります。

■授乳婦
ラットを用いた動物実験で、乳汁中に移行することが確認されています。

■小児等
小児等を対象とした臨床実験が行われていないため、安全性が確立されていません。

■高齢者
高齢者は一般的に生理機能が低下しているため、使用前に臓器の機能や状態を十分に確認する必要があります。

上記にあてはまる方は、フルダラビンリン酸エステルを使用する事が出来ない可能性があります。
フルダラビンリン酸エステルを使用する前に、医師又は薬剤師に使用しても問題ないか必ず確認をして下さい。

併用禁忌薬

併用注意薬
・シタラビン:骨髄抑制等の副作用が増強するおそれがあります。
・シタラビン:骨髄抑制等の副作用が増強するおそれがあります。

上記を使用している方は、フルダラビンリン酸エステルを使用する事が出来ない可能性があります。
フルダラビンリン酸エステルを使用する前に、医師又は薬剤師に使用しても問題ないか必ず確認をして下さい。

併用禁忌薬
ペントスタチン(コホリン):致命的な肺毒性が発現する危険があります。

併用禁忌薬がないからといって、その他の医薬品と併用するのは危険です
現在、薬を服用している場合は、併用可能かどうか必ず医師に相談してください。

フルダラビンリン酸エステルに関する
よくある質問
フルダラビンリン酸エステル摂取量の目安は体表面積で決まるとのことですが、体表面積はどのようにして計測するのですか?

実際に体表面積を計測するのは困難なので、身長と体重から概算します。
計算方法には、デュポア式、新谷式、藤本式などいくつか種類があり、例えばデュポア式では、
体表面積=身長の0.725乗×体重の0.425乗×0.007184
というようにそれぞれ公式があります。
どの公式を用いるかは医師によって異なりますが、当然、どれを用いてもあまり大きな差は出ません。

なぜ、フルダラビンリン酸エステル摂取量の目安は体表面積で決めるのですか?

医薬品の用量は「誰にでも容易に判断が出来る」などの理由から、年齢や症状によって定められているケースがほとんどです。
しかし実際のところ、薬剤の効能に影響する条件(循環血液量、基礎代謝など)は体表面積と相関するといわれています。
特に本成分のように、抗悪性腫瘍作用を有する場合、毒性は強いですが摂取量の増加に伴って殺細胞効果が上がるので、それを安全に最大量まで摂取するために、体表面積に即した緻密な用量調整が必要となるのです。

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