トラスツズマブデルクステカン(遺伝子組換え)

成分名

トラスツズマブデルクステカン(遺伝子組換え)

適応症状

・化学療法歴のあるHER2陽性の手術不能又は再発乳癌
・化学療法歴のあるHER2低発現の手術不能又は再発乳癌
・がん化学療法後に増悪したHER2陽性の治癒切除不能な進行・再発の胃癌

簡易説明

エンハーツは、第一三共株式会社が開発した新しい抗体薬物複合体です。HER2は乳癌患者の約20%で過剰発現するタンパク質です。本剤は、HER2に対する抗体と、DNA損傷作用を有するカンプトテシン誘導体を結合させたもので、抗体がHER2に結合し細胞内に取り込まれた後、リンカーが加水分解し、薬物が遊離して腫瘍細胞の増殖を抑制します。本剤は、特にHER2をターゲットとした標準的な治療後に再発した乳癌患者に対する新たな治療選択肢となる可能性があります。

処方可能な診療科目

乳腺外科/消化器外科など

健康保険の適応

健康保険適応

病院で処方してもらう時の費用目安

本剤は処方薬ではありません。
薬代1瓶あたりの目安:100mg約164811円
病院によって差が有り薬代の他に、初診料・診察料・検査料などが必要になります。

厚生労働省による認可、または発売年月日

発売年月日:2020年5月

国内のジェネリック認可

現在ジェネリック医薬品の製造はありません。

関連製品(先発薬)

エンハーツ点滴静注用100mg【製薬メーカー:第一三共】

関連製品(ジェネリック)

現在ジェネリック医薬品の製造はありません。

海外での使用実績

アメリカで2019年に承認されております。

効果・作用

トラスツズマブ デルクステカンは、第一三共が開発した薬剤で、腫瘍細胞の細胞膜の上に発現する HER2 に結合し、細胞内に入った後、遊離した MAAA-1181a が DNA 傷害作用と細胞死誘導作用を示すことで腫瘍増殖を抑制していると考えられております。
HER2は乳がん患者の約20%で発現しており、予後の低下や再発に関わるとされています。

トラスツズマブ エムタンシンによる治療歴のあるHER2陽性の手術不能もしくは再発乳癌患者を対象とした国際共同第2相試験を実施しています。対象は184名、そのうち日本人は30名含まれていました。本剤1kgあたり5.4mg/kgを3週間の間をあけて点滴静注しました。独立効果判定機関により標的病変が特定された患者167名において、主要評価項目として設定した奏効率は64.1%でした。

トラスツズマブ、白金系抗悪性腫瘍剤、とフッ化ピリミジン系抗悪性腫瘍剤を含む2レジメン以上の治療で悪化が認められたHER2陽性の治癒切除ができない進行・再発の胃腺癌もしくは胃食道接合部腺癌患者を対象として、国際共同第2相試験を実施しています。
本剤と治験担当医師が選択した治療(イリノテカン塩酸塩水和物もしくはパクリタキセル)を比較する方法で試験を行いました。本剤群では本剤1kgあたり6.4mgを3週間の間をあけて点滴静注しました。187名の患者のうち日本人は149名含まれており、本剤群125名、医師選択治療群62名でした。
独立効果判定機関により病変が特定された175名において、主要評価項目として設定した奏効率は、本剤群で51.3%、医師選択治療群で14.3%であり、本剤群で統計学的に有意に高い奏効率を示しました。
また、副次評価項目の一つである全生存期間の中央値(中間解析)でも、本剤群12.5ヵ月、医師選択治療群8.4ヵ月であり、本剤は治験担当医師が選択した治療に対して、統計学的に有意な延長を示しました。

使用方法

●化学療法歴のあるHER2陽性の手術不能もしくは再発乳癌、化学療法歴のあるHER2低発現の手術不能もしくは再発乳癌
1回1kgあたり5.4mgを90分かけて3週間の間をあけて点滴静注します。なお、初回投与の忍容性が良好であれば2回目以降の投与時間は30分間まで短縮することが可能です。

●がん化学療法後に増悪したHER2陽性の治癒切除不能な進行・再発の胃癌
1回1kgあたり6.4mgを90分かけて3週間の間をあけて点滴静注します。なお、初回投与の忍容性が良好であれば2回目以降の投与時間は30分間まで短縮することが可能です。

副作用

主な副作用
主に、脱毛症や悪心、嘔吐、疲労や食欲減退があげられます。

項目別の発現頻度は以下の通りです。
皮膚・・脱毛症(30%以上)、発疹/皮膚色素過剰/そう痒症(10%未満)
精神神経系・・頭痛/浮動性めまい/嗜眠(10%未満)
消化器・・悪心/嘔吐(30%以上)、下痢/便秘/口内炎/腹痛(10~30%未満)、味覚障害/消化不良/腹部膨満/鼓腸/胃炎(10%未満)
肝臓・・AST増加/ALT増加(10~30%未満)、血中ビリルビン増加/血中ALP増加/γ-GTP増加/肝機能異常/肝機能検査異常/トランスアミナーゼ上昇(10%未満)
呼吸器・・呼吸困難/咳嗽/上気道感染/肺炎(10%未満)
循環器・・心電図QT延長/駆出率減少/心不全(10%未満)
その他・・疲労/食欲減退(30%以上)、体重減少(10~30%未満)、筋骨格痛/低カリウム血症/鼻出血/発熱/末梢性浮腫/ドライアイ/脱水/霧視/血中クレアチニン増加(10%未満)

重大な副作用
<間質性肺炎>
重篤な間質性肺疾患があらわれることがあり、死亡に至った例も報告されています。異常があらわれた場合には、呼吸器疾患に精通した医師と連携の上、必要に応じて胸部CT検査、血清マーカー等の検査を実施し、必要に応じて副腎皮質ホルモン剤の投与を検討してください。
<骨髄抑制>
好中球数減少、貧血、白血球数減少、血小板数減少、リンパ球数減少、発熱性好中球減少症などがあらわれる可能性があります。
<インフュージョンリアクション>
重度の症状があらわれた場合には、すぐに投与を中止してください。

※その他、異変を感じた場合は直ぐに医師の診察を受け指示に従ってください。

使用に注意が必要な方
使用出来ない方

使用が出来ない方
■トラスツズマブ デルクステカン(遺伝子組換え)を配合した医薬品の添加物に、アレルギーをお持ちの方
下記、添加物にアレルギーをお持ちの方はアレルギー反応を起こしてしまう為、服用できません。
▼エンハーツの有効成分
トラスツズマブ デルクステカン(遺伝子組換え)
▼代表薬の添加物
精製白糖、L-ヒスチジン、L-ヒスチジン塩酸塩水和物、ポリソルベート80
・以前、トラスツズマブ デルクステカン(遺伝子組換え)を使用して過敏症となったことのある方は使用できません。

使用に注意が必要な方
・間質性肺疾患のある方もしくは以前かかったことのある方は、間質性肺疾患が発現もしくは増悪し、死亡に至る可能性があります。
・左室駆出率(LVEF)が低下している方は、LVEF低下を悪化させるおそれがあります。
・アントラサイクリン系薬剤の投与歴のある方、胸部への放射線治療中の方もしくはその治療歴のある方、うっ血性心不全若しくは治療を要する重篤な不整脈のある方もしくは以前かかったことのある方、心筋梗塞、狭心症などの冠動脈疾患の方もしくは以前かかったことのある方、高血圧症の方もしくはそ以前かかったことのある方は、心不全のなどの心障害があらわれるリスクがあります。
・重度の肝機能障害のある方は、血中濃度を上昇させる可能性があります。
・小児を対象とした試験は実施していません。

上記にあてはまる方は、トラスツズマブデルクステカン(遺伝子組換え)を使用する事が出来ない可能性があります。
トラスツズマブデルクステカン(遺伝子組換え)を使用する前に、医師又は薬剤師に使用しても問題ないか必ず確認をして下さい。

併用禁忌薬

現在併用禁忌薬に該当する医薬品はありません。

併用禁忌薬に入ってないからといって、その他の医薬品と併用するのは危険です
現在、薬を服用している場合は、併用可能かどうか必ず医師に相談してください。

トラスツズマブデルクステカン(遺伝子組換え)に関する
よくある質問
エンハーツを投与中、手についてしまったときにはどうしたらよいでしょうか?

特別な対処法は規定されていませんが、手についてしまった時には速やかに水で流し、石鹸で洗い流してください。

よくある質問:エンハーツ

【上記引用元:第一三共 Medical Community】

乳がんにおいて他の薬剤と併用することは可能でしょうか?

本剤を他の薬剤と併用で投与した時の安全性や有効性は確立していません。臨床試験でも単剤投与としていたため、単剤で投与してください。

よくある質問:エンハーツ

【上記引用元:第一三共 Medical Community】

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