ドカルパミン

成分名

ドカルパミン

適応症状

心不全/強心作用

簡易説明

ドカルパミンは田辺製薬株式会社(現、田辺三菱製薬株式会社)が開発したドパミンプロドラッグ(体内でドパミンになる薬)でタナドーパ(以下、本剤)は循環器系に作用する世界初の飲み薬(経口強心薬)です。本剤は1997年に苦味を軽減する改良がなされています。
また本剤は厚労省による再審査(最新の医学的知見に基づく薬の再評価)を2007年3月に受け、有効性などが再確認されています。
血中のドパミンを効率的、持続的に上昇させる作用により、カテコラミン注射からの早期離脱が可能となり、リハビリや入院期間の短縮による生活の質向上が期待できます。

処方可能な診療科目

内科/循環器内科など

健康保険の適応

ドパミン塩酸塩注射液、ドプタミン塩酸塩注射液等の少量静脈内持続点滴療法(5μg/㎏/min未満)からの離脱が困難な循環不全で、少量静脈内持続点滴療法から経口剤への早期離脱を必要とする場合*

*本剤を使用する時はドパミン塩酸塩注射液、ドプタミン塩酸塩注射液等から切り替えます。
切り替え後に切り替えが困難と考えられる場合は、もとの点滴療法に戻します。

病院で処方してもらう時の費用目安

診察料などの目安:1,020円(1日3包)*
*本剤は長期の維持療法には使用できないため、1日分の薬代としています。
薬代1包あたりの目安:339.80円
薬代後発品1包の目安:後発品なし
病院によって差が有り薬代の他に、初診料・診察料・検査料などが必要になる

厚生労働省による認可、または発売年月日

1994年12月5

国内のジェネリック認可

現在ジェネリック医薬品の製造はありません。

関連製品(先発薬)

タナドーパ顆粒75%【製薬メーカー:田辺三菱製薬株式会社】

関連製品(ジェネリック)

現在ジェネリック医薬品の製造はありません。

効果・作用

本剤は、「急性・慢性心不全ガイドライン(2017改訂版)」(以下、GL2017)では経口強心薬に分類されています。
GL2017では、心不全とは「なんらかの心臓機能障害、すなわち、心臓に器質的および/あるいは機能的異常が生じて心ポンプ機能の代償機転が破綻した結果、呼吸困難・倦怠感や浮腫が出現し、それに伴い運動耐容能が低下する臨床症候群」と定義されています。これを一般向けにわかりやすく表現したものとして「心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気」としています。
つまり、心不全とは「心臓のポンプ機能が低下している」ため生じる「様々な症状がだんだん悪くなり」、「寿命が短くなる」病気とされています。
心不全の急性期(急性心筋梗塞による心不全)は心ポンプ機能の回復が急務となり、その際にカテコラミン注射でポンプ機能の補助と血圧上昇を行いますが、本剤はこのカテコラミン治療期間を短くするために用います。
GL2017では急性心不全に使用する薬剤として、利尿薬、血管拡張薬、強心薬・昇圧薬、心拍数調整薬が記載されており、カテコラミンは強心薬・昇圧剤に「ドブタミン」、「ドパミン」、「ノルアドレナリン」が記載されています。
ドブタミンは「ポンプ失調を有する肺うっ血患者への投与」(推奨クラス:Ⅱa、エビデンスレベル:C)、ドパミンは「尿量増加や腎保護効果を期待しての投与」(推奨クラス:Ⅱb、エビデンスレベル:A)となっています。推奨クラスⅡaは「有用・有効である可能性が高い」、推奨クラスⅡbは「有用性・有効性がそれほど確立されていない」と評価されています。エビデンスレベルはそれぞれの研究結果が報告された試験や研究の規模をA~Cに分類していて、Aの方が確度の高い試験として評価されています。
このことから、ドブタミンは「確度の低い試験結果ではあるが、有用・有効性が高い薬」、ドパミンは「確度の高い試験の結果から、有用・有効性が確立されなかった薬」と評価されています。
なお、カテコラミンを含む強心薬・昇圧薬は、不整脈、心筋虚血、心筋障害を起こすことがあり、血管拡張薬で治療した方よりも死亡率が高いとの報告もあり、必要最小量、最短期間の使用が望ましいとされています。また、GL2017はアップグレード版(2021年 JCS/JHFSガイドライン フォーカスアップデート版 急性・慢性心不全治療)が発表されていますが、その中にはカテコラミンの記載はありません。
本剤は、GL2017で上記のような評価を受けている、ドプタミン塩酸塩注射液やドパミン塩酸塩注射液からの切替時に用いられる薬です。GL2017では、上記のような否定的な報告はあるが、本剤の有用性には検討の余地はあると記載されています。
本剤には血中のドパミン濃度を高める働きがあり、これにより心臓の収縮力(ポンプ機能)を高めるとともに、腎臓の血流を増加させることにより腎機能の維持や尿量の増加させます。また、心臓(冠動脈)や肝臓(門脈)の血流を増やす働きがあることが確認されています。

本剤の臨床試験
全般有用率:74.2%(95/128)
心筋症:60.0%(18/30)、虚血性心疾患:78.2%(43/55)、弁膜症:78.6%(22/28)、その他:80.0%(12/15)
試用成績調査
カテコラミン注射からの離脱不可症例率(無効率):5.02%(130/2,591例)
リハビリ開始、退院の短縮日数(本剤使用群と未使用群との比較)
入浴可能までの期間:7日間、普通速度で500m歩行可能:6日間、退院:8日間

使用方法

1日3包を3回に分けて飲みます。使用量は年齢、症状により増減します。

副作用

副作用発現率:3.13%(94例/2995例)
【主な副作用】
悪心、食欲不振、胃不快感、嘔吐、心房細動、心室性期外収縮、肝機能障害等
(15歳未満の小児)
副作用発現率:2.89%(5例/173例)
【主な副作用】
嘔吐、苦味、頻脈、肝機能障害、BUN上昇・血清カリウム上昇

【重大な副作用】
心室頻脈等の不整脈、肝機能障害、黄疸

※その他、異変を感じた場合は直ぐに医師の診察を受け指示に従ってください。

使用に注意が必要な方
使用出来ない方

使用が出来ない方
■褐色細胞腫の方
過剰な交感神経刺激反応が起こったり、期待した効果が得られない恐れがあるため、服用できません。
■ドカルパミンを配合した医薬品の添加物に、アレルギーをお持ちの方
下記、添加物にアレルギーをお持ちの方、タナドーパはアレルギー反応を起こしてしまう為、服用できません。
▼タナドーパの有効成分
ドカルパミン
▼タナドーパの添加物
アスパルテーム(L-フェニルアラニン化合物)、カルメロースカルシウム、二酸化ケイ素、白糖、ヒプロメロース、ヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステル、l-メントール

使用に注意が必要な方
肥大型閉塞性心筋症の方(病態が悪化するおそれがあります。)
妊婦、授乳婦(動物実験で胎児への悪影響、乳汁への移行等が報告されています。)
高齢者(副作用があらわれやすいため。)

上記にあてはまる方は、ドカルパミンを使用する事が出来ない可能性があります。
ドカルパミンを使用する前に、医師又は薬剤師に使用しても問題ないか必ず確認をして下さい。

併用禁忌薬

併用注意薬
フェノチアジン系誘導体、プチロフェノン系誘導体(本剤の作用が減弱することがあります。)
MAO阻害剤(本剤の血圧上昇作用等が増強、延長するおそれがあります。)

上記を使用している方は、ドカルパミンを使用する事が出来ない可能性があります。
ドカルパミンを使用する前に、医師又は薬剤師に使用しても問題ないか必ず確認をして下さい。

併用禁忌薬
なし

上記の併用禁忌薬に入ってないからといって、その他の医薬品と併用するのは危険です
現在、薬を服用している場合は、併用可能かどうか必ず医師に相談してください。

ドカルパミンに関する
よくある質問
切り替えが困難な場合とはどのような状態ですか。

血圧の低下、尿量の減少、呼吸困難、倦怠感、脈拍の変動などの症状が現れる場合は切り替えが困難である可能性を考慮します。

長期使用はできないのですか。

本剤は長期の使用データが十分ではありません。本剤投与中は治療経過を十分に観察し、病状に応じた必要最低限の使用にとどめます。

参考元一覧

ドカルパミン(添付文書(よくある質問)、インタビューフォーム) 【PMDA 医療用医薬品 情報検索】

急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版) 【一般社団法人 日本心不全学会 ステートメント・ガイドライン】

2021年 JCS/JHFSガイドライン フォーカスアップデート版 急性・慢性心不全診療 【一般社団法人 日本心不全学会 ステートメント・ガイドライン】

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