トレプロスチニル

成分名

トレプロスチニル

適応症状

<トレプロスト注射液>
WHO機能分類クラスⅡ、Ⅲ及びⅣの肺動脈性肺高血圧症

<トレプロスト吸入液1.74mg>
肺動脈性肺高血圧症

簡易説明

トレプロストは肺高血圧症の症状改善に用いられる薬剤です。肺の血管を拡げることにより肺動脈の血圧を下げ、血液を流れやすくします。同時に肺の血管内で血液が固まりにくくすることにより、血管が詰まらないようにする作用も持っています。
注射剤と吸入剤があり、用途に合わせて使い分けることができます。日本では持田製薬が販売していますが、海外でも約35か国で使用されており、使用実績が豊富な薬剤の1つです。

処方可能な診療科目

循環器内科/膠原病内科/一般内科など

健康保険の適応

健康保険適応

病院で処方してもらう時の費用目安

この薬は処方薬ではありません。
トレプロスト注射液20mg【製薬メーカー:持田製薬】20mg1瓶149865円(薬価)
トレプロスト注射液50mg【製薬メーカー:持田製薬】50mg1瓶287464円(薬価)
トレプロスト注射液100mg【製薬メーカー:持田製薬】10mg1瓶446550円(薬価)
トレプロスト注射液200mg【製薬メーカー:持田製薬】200mg1瓶674387円(薬価)
トレプロスト吸入液1.74mg【製薬メーカー:持田製薬】1.74mg1管18914.2円円(薬価)

厚生労働省による認可、または発売年月日

2014年9月発売

国内のジェネリック認可

現在ジェネリック医薬品の製造はありません。

関連製品(先発薬)

トレプロスト 【製薬メーカー:持田製薬】

関連製品(ジェネリック)

現在ジェネリック医薬品の製造はありません。

海外での使用実績

【アメリカ】
Remodulin® Injection, for subcutaneous or intravenous useの名前で販売されており、剤形は注射剤です。1mg/mL、2.5mg/mL、5mg/mL、10mg/mL、20mg/mLの5規格あります。
持続皮下投与が2002年、持続静脈内投与が2004年に承認されました。

<適応症>
・WHOグループ 1の肺動脈性肺高血圧症(PAH)患者における運動に伴う症状の軽減
・フローランからの切替えを必要とする患者における臨床的悪化頻度の減少

<用法及び用量>
開始用量は 1.25ng/kg/分ですが、Remodulin®の全身性の薬理作用により本開始用量に耐えられない場合は、0.625ng/kg/分に減量して投与します。Remodulin®は皮下投与が望ましいですが、重度の注入部位疼痛又は注入部位反応により皮下投与に耐えられない場合は、中心静脈カテーテルより持続静脈内投与することもできます。

最初の 4週間は 1週間あたり 1.25ng/kg/分で増量し、その後は臨床症状に基づいて 1週間あたり 2.5ng/kg/分で増量します。耐えられる場合、用量の調節回数を増加することができますが、突然の投与中止は避けてください。中断後数時間以内であれば、同じ投与速度で Remodulinの投与を再開することができます。長期の中断後では再度漸増する必要があります。

日本では認められていませんが、アメリカではエポプロステノールから Remodulinへの切替えが認められています。エポプロステノールの静脈内投与量を減量すると同時に Remodulinの持続投与を開始、増量することによって行ってください。
Remodulinへの切替えは患者を入院させ、常に反応(例えば歩行距離、疾患進行の徴候及び症状)を観察しながら行います。切替え期間中、Remodulin投与量は切替え時のエポプロステノール投与量の10%を推奨投与量として開始し、その後エポプロステノール量を減量しながら増量していきます。PAH症状の増悪は、まず Remodulinの投与量の増量によって治療します。プロスタサイクリンやその類似体でよくみられる副作用は、まずエポプロステノールの投与量の減量によって治療します。

効果・作用

トレプロスチニルは、プロスタサイクリン誘導体です。プロスタサイクリンの化学構造を改変することにより、消失半減期及び室温下での溶液安定性を改善した注射剤です。
調製時の溶解が不要な液剤であり、静脈内投与のみならず皮下投与も可能な注射剤です。
トレプロスチニルの主な薬理学的作用は、肺及び全身の動脈血管床に対する直接的な血管拡張作用と、血小板凝集抑制作用の2点です。

特発性又は遺伝性肺動脈性肺高血圧症及び結合組織病に伴う肺動脈性肺高血圧症患者5例を対象とした国内第Ⅱ/Ⅲ相試験を実施しています。
非盲検非対照臨床試験において本剤を持続静脈内投与しました。投与1、6、12週時の投与速度(中央値、範囲)はそれぞれ16.0、80.0、120.0ng/kg/分でした。肺血管抵抗係数及び平均肺動脈圧の低下など心肺血行動態の改善が認められ、運動耐容能の評価である6分間歩行距離の改善が認められました。5例中4例では、肺血管抵抗係数及び6分間歩行距離が共に改善しました。

また、持続静脈投与に加えて、持続皮下投与の有効性を検討した国内第Ⅱ/Ⅲ相試験を実施しています。
特発性又は遺伝性肺動脈性肺高血圧症及び結合組織病に伴う肺動脈性肺高血圧症患者を対象とした非盲検非対照臨床試験においてトレプロスチニルを持続皮下又は持続静脈内投与しました。エポプロステノール未使用の集団15例において、投与1、6、12週時の投与速度(中央値、範囲)はそれぞれ1.25、5.0、10.3ng/kg/分でした。運動耐容能の評価である6分間歩行距離の延長が認められましたが、心係数、肺血管抵抗係数、平均肺動脈圧など心肺血行動態の改善は認められませんでした。

より多くの患者を対象とした、海外第Ⅲ相試験を実施しています。
肺動脈性肺高血圧症患者469例を対象とした無作為割付二重盲検プラセボ対照多国間多施設共同並行群間比較試験において、本剤を12週間持続皮下投与しました。投与1、6、12週時の投与速度(中央値、範囲)はそれぞれ2.3、5.5、8.2ng/kg/分でした。本剤投与群はプラセボ群に比較して、心係数及び混合静脈血酸素飽和度を有意に増加させ、平均右心房圧、平均肺動脈圧、肺血管抵抗係数及び体血管抵抗係数を有意に低下させました。また、プラセボ群に比較して、本剤投与群において、運動耐容能、修正ボルグスケール、呼吸困難-疲労度評定及び身体的側面QOLに有意な改善が認められました。

使用方法

【トレプロスト注射液】
薬剤を一定の速度で静脈内もしくは皮下に、持続的に注射します。

最初、1.25ng/kg/分の速度で投与しますが、この初期投与速度が副作用により耐えられない場合は、投与速度を0.625ng/kg/分に減量します。
原則、最初の4週間は、1週間あたり最大1.25ng/kg/分で増量します。その後は症状に応じて1週間あたり最大2.5ng/kg/分で増量し、最適投与速度を決定します。

【トレプロスト吸入液1.74mg】
1日4回ネブライザを用いて吸入投与します。1回3吸入から投与を開始し、忍容性を確認しながら、7日以上の間隔で、1回3吸入ずつ、最大9吸入まで漸増します。3吸入の増量に対して忍容性に懸念がある場合は、増量幅を1又は2吸入としても問題ありません。忍容性がない場合は減量し、1回最小量は1吸入としてください。

副作用

主な副作用
【トレプロスト注射液】
主に、四肢痛、顎痛、頭痛、不眠症、注射部位疼痛、注射部位紅斑、注射部位腫脹、注射部位熱感、注射部位硬結、注射部位そう痒感、浮腫、倦怠感、下痢、悪心があげられます。

主な発現頻度は以下の通りです。
出血傾向・・不正子宮出血、結膜出血、鼻出血、紫斑(10%未満)喀血、肺出血(頻度不明)
循環器・・潮紅/ほてり(10%以上)、動悸/低血圧(10%未満)
消化器・・下痢/悪心(10%以上)、嘔吐/上腹部痛(10%未満)、軟便/腹痛(頻度不明)
筋骨格・・四肢痛/顎痛(10%以上)、筋骨格痛(10%未満)
精神神経系・・頭痛/不眠症(10%以上)、浮動性めまい/異常感(10%未満)、頭部不快感(頻度不明)
皮膚・・発疹/そう痒症(10%未満)
投与部位・・射部位疼痛/注射部位紅斑/注射部位腫脹/注射部位熱感/注射部位硬結/注射部位そう痒感(10%以上)、注射部位出血/注射部位変色/注射部位血管炎(10%未満)、蜂巣炎(頻度不明)
その他・・浮腫/倦怠(10%以上)、血管障害(血管痛)、発熱(10%未満)

重大な副作用
血圧低下や湿疹、出血、血小板減少(10.5%)、好中球減少(2.6%)、甲状腺機能亢進症、血流感染、注射部位の局所反応に注意してください。

【トレプロスト吸入液1.74mg】
主に、頭痛や浮動性めまい、咳嗽、咽喉刺激感、口腔咽頭痛、悪心などがあげられます。

主な発現頻度は以下の通りです。
出血傾向・・喀血/肺出血/鼻出血(10%未満)、不正子宮出血/結膜出血/紫斑(頻度不明)
循環器・・潮紅(10%以上)、ほてり/動悸/低血圧(10%未満)
消化器・・悪心(10%以上)、下痢/軟便/嘔吐/腹痛(10%未満)、上腹部痛(頻度不明)
筋骨格・・顎痛/四肢痛(10%未満)、筋骨格痛(頻度不明)
精神神経系・・頭痛(37.1%)、浮動性めまい(10%以上)、頭部不快感/異常感(10%未満)、不眠症(頻度不明)
呼吸器・・咳嗽(50.8%)、咽喉刺激感/口腔咽頭痛(10%以上)、口腔咽頭不快感 /口腔内不快感/鼻閉/呼吸困難/喘鳴(10%未満)
皮膚・・発疹(10%未満)、そう痒症(頻度不明)
その他・・発熱(10%未満)、浮腫/倦怠感(頻度不明)

重大な副作用としては、血圧低下(1.5%)、失神(1.5%)、出血、血小板減少、好中球減少、甲状腺機能亢進症に注意してください。

※その他、異変を感じた場合は直ぐに医師の診察を受け指示に従ってください。

使用に注意が必要な方
使用出来ない方

使用が出来ない方
【トレプロスト注射液】

■トレプロスチニルを配合した医薬品の添加物に、アレルギーをお持ちの方
下記、添加物にアレルギーをお持ちの方はアレルギー反応を起こしてしまう為、服用できません。

▼トレプロスチニルの有効成分
トレプロスチニル

▼代表薬の添加物
クエン酸ナトリウム水和物、水酸化ナトリウム、m-クレゾール、塩化ナトリウム、pH調節剤

・以前、トレプロスチニルを使用して過敏症となったことのある方は使用できません。
・右心不全の急性増悪時の方、重篤な左心機能障害を有する方、重篤な低血圧の方は症状を悪化させる恐れがあるため使用できません。

【トレプロスト吸入液1.74mg】

■トレプロスチニルを配合した医薬品の添加物に、アレルギーをお持ちの方
下記、添加物にアレルギーをお持ちの方はアレルギー反応を起こしてしまう為、服用できません。

▼トレプロスチニルの有効成分
トレプロスチニル

▼代表薬の添加物
塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム水和物、水酸化ナトリウム、pH調節剤

・以前、トレプロスチニルを使用して過敏症となったことのある方は使用できません。

使用に注意が必要な方
【トレプロスト注射液/トレプロスト吸入液1.74mg】
・肺静脈閉塞性疾患を有する方は症状を悪化させるため投与しないことが望ましいです。
・高度に肺血管抵抗が上昇している方は、心機能も著しく低下しているため、使用に注意してください。
・出血傾向のある方は、出血を助長する恐れがあるため使用に注意してください。
・低血圧の方は血圧がさらに下がる恐れがあるため注意をしてください。
・肝機能障害の方は、血中濃度が上昇するため注意をしてください。
・妊婦、又は妊娠している可能性のある女性
・小児
・高齢者

上記にあてはまる方は、トレプロスチニルを使用する事が出来ない可能性があります。
トレプロスチニルを使用する前に、医師又は薬剤師に使用しても問題ないか必ず確認をして下さい。

併用禁忌薬

併用注意薬
<カルシウム拮抗剤/アンジオテンシン変換酵素阻害剤/利尿剤/プロスタグランジンE1、E2、I2誘導体製剤等(降圧作用を有する薬剤)>
ともに降圧作用を増強し、過度の血圧低下が起こることがあるため、血圧に注意しながら併用してください。

<ワルファリンカリウム等(抗凝固剤)/ウロキナーゼ等(血栓溶解剤)/アスピリン、チクロピジン塩酸塩、プロスタグランジンE1、E2、I2誘導体製剤等(血小板凝集抑制作用を有する薬剤)>
出血の危険性を増大させる恐れがあるため、定期的にプロトロンビン時間等の血液検査を行い、注意しながら併用をしてください。

<リファンピシン(CYP2C8誘導剤)>
本剤の効果が減弱する恐れがあるため、肺高血圧症の観察をしながら併用してください。

<デフェラシロクス(CYP2C8阻害剤)>
本剤のAUC及びCmaxが上昇し、本剤の副作用が発現する恐れがあるため、併用には注意をしてください。

上記を使用している方は、トレプロスチニルを使用する事が出来ない可能性があります。
トレプロスチニルを使用する前に、医師又は薬剤師に使用しても問題ないか必ず確認をして下さい。

併用禁忌薬
なし

併用禁忌薬がないからといって、その他の医薬品と併用するのは危険です
現在、薬を服用している場合は、併用可能かどうか必ず医師に相談してください。

トレプロスチニルに関する
よくある質問
消失半減期はどのくらいですか?

国内外臨床試験における消失半減期は 0.8~4.6 時間でした。

製品の治療学的特性

【上記引用元:トレプロスチニル医薬品インタビューフォーム】

名称の由来は何ですか?

有効成分である「トレプロスチニル」とプロスタグランジン類のステムである「プロスト」を組み合わせて命名しました。

販売名

【上記引用元:トレプロスチニル医薬品インタビューフォーム】

参考元一覧

トレプロスチニルくすりのしおり

トレプロスト添付文書

トレプロスト注射液50mgの基本情報 【日経メディカル】

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医薬品を使用し、体調不良が現れた場合、我慢せずに直ちに医師の診察を受け、指示に従って下さい。